子供に読ませたい児童文学を五つ選べ
自分がかなり本の虫だったおかげで、こんな人間になってしまったので、自分に子供ができたら、もうちっとアウトドアに育ってほしいものだと思っている。
昔から読書感想文というのが嫌いなのだが、自分が子供の頃、そうしたコンクールで大賞をとった子供が新聞紙面上のインタビューで「私はTVゲームがこれぽっちも面白くない、本を読んでいれば十分」と言っているのを読んだことがある。子供ながらに「何て大人の要求を読み取るのが上手な嘘つきなんだ」と思ったのだが、いろんなジャンルへの扉を最初から自らの手で閉めてしまうのは馬鹿げたことだと思う。
だからこそ、いろいろな媒体への知的好奇心を育てるというのが重要だとは思うのだが、一方で「どんなジャンルでも9割の作品は屑」という真理がある。歴史の浅いジャンルに良作はあっても、数でいえば古典の方が良質な作品の絶対数は多い、ということ。だから、逆に早い内に古典に触れるということはいいことだと思う。特に現代を生きる者にとって、遠い過去の言語やしきたりで表現されたものには取っ付きにくい部分が多かれ少なかれある。例えば、音楽におけるクラッシック、メディアにおける活字媒体。早い内に活字に慣れるということは、活字媒体という膨大な過去の遺産への道を開くことでもあるしね。
とまぁ硬い話になってしまったが、要は「お父さん、面白い本を教えてよ」と言われて何を勧めるか。定番の本は触れる機会もあるだろうが、子供の頃に戻って印象に残っている児童文学を思い起こしてみようという企画。どうしても、ジャンル的にはファンタジーに思い入れがあるので、その周辺で。不健康な江戸川乱歩とか、子供向けの「マガーク探偵団」みたいなの、「大草原の小さな家」みたいなクラッシック等々もいいと思うけど、まぁあえて5つに絞ってみる。
1. 斎藤 惇夫 「冒険者たち」
僕らの世代には「ガンバと愉快な仲間達」というアニメがおなじみだが、僕はあんまり好きでなく当時ほとんど見なかった。というのも、原作本を親父にプレゼントしてもらって偉く感動してしまったので、アニメの方がやっぱり見劣りしてしまったから。原作で見事に描かれている15人の登場人物達(今考えると「七人の侍」辺りが元ネタなのだろうか)の人数が削られている上、アニメ特有の軽い乗りに置き換えられているところがちょっと。接する順番が逆だったら、印象も違っていたんだろうと思うのだが。
とにかく児童文学のわりに、主人公達の生死のドラマを扱っていてストーリーが軽くない。また、ペンで丁寧に描かれた挿絵も見事で、本として素晴らしい。この作家は他に「冒険者たち」の前日談にあたる「グリックの冒険」、後日談の「ガンバとかわうその冒険」を書いており、自分もリアルタイムで読んでいたのだが、その後の作品は世に出ていないようだ。他の2作とも名作だと思う。
2. C.S.ルイス 「ナルニア国物語(シリーズ)」
大人向けの文庫本に関しては、古臭くなってしまった訳と読みづらい活字体で、できることならば避けたい岩波だが児童文庫に関しては充実しているのではないだろうか。「大草原の小さな家」とか「ドリトル先生」とか、しっかりした装丁の本は好感が持てた覚えがある。
「不思議の国のアリス」のようなしっかりした大人の作家が書いた児童向けのシリーズで、7冊に渡る年代記は想像力豊かで良質なファンタジー。最終作「さいごの戦い」は少し意表を突くラストで、子供心に影を残した。古き良き英国系ファンタジーの伝統ですな。
3. M.エンデ 「はてしない物語」
斎藤 惇夫同様、僕の世代でリアルタイムに出版が進んでいた作家として記憶に残る。「モモ」は大人を含めてブームになったしね。ただし、ドイツ人ならではの生真面目な説教臭さがあって、そこら辺が古き良きファンタジーの伝統をまとったこちらの作品の方で弱まっている気がしたので好きだった。
かなり分厚い本でストーリーも練ってあり、本の装丁もかなり凝っている。読後感としては「風の谷のナウシカ」(映画の方)を観た後に近いだろうか。説教臭いところも含めて。映画「ネバーエンディング・ストーリー」の原作でもある。もともと盛り沢山の原作なので、映画の方はお子様向け(悪い意味で)の腑抜けた作品になっていた記憶がある。
4. ル=グウィン 「影との戦い」
近年「指輪物語」のファンの辺りが同じく読んでいるような印象がある「ゲド戦記」シリーズ。僕は最初の3作しか読んでいないのだが、いつの間にか後編2作が出ていたのね、知らんかった。その他の作品を村上春樹なんぞが訳しているではないか。意外と新しい作家なんだ、というのは今回調べてみた結果の新鮮な驚き。しかも作者はアメリカ人でベイエリア生まれとは!
2作目、3作目も悪くなかった印象があるのだが、この1作目「影との戦い」はものすごく子供心に響いた作品。自分の内面との戦いをモチーフにした作品で、大人ならばいろいろ深読みもできる気もするが、子供として読んでも魅力的なストーリーだと思う。3のエンデの物語の元ネタでもあるような気もする。
5. P.ファーマー 「夏の小鳥たち」
もしくは 天沢退二郎 「光車よ、まわれ!」
今回読み返すことができないので、5冊のセレクションはかなりの記憶頼り。5冊目は反則の「2冊の内どちらか読み返していいと思った方」。1冊目は60年代のイギリスの作家のファンタジー。女性らしい繊細な感じがストーリーの語り口にも表れていて、ちょっと物悲しくもあるストーリー。空を飛べるようになるという宮崎アニメ作品にも通ずる幻想と少し物悲しいラストが印象的だったので記憶に残っていた。篠崎書林というメジャーじゃないところから同じ作家の他の作品が出ていたようだが、現在廃版のようでもある。
2番目の作家は宮沢賢治や幻想文学の研究者としても著名らしい。何作か書いているので、どれが記憶に残っている作品か自信がないのだが、「オレンジ党、海へ」の方かもしれない。両方とも読んでいるはずではある。日本が舞台で、日本固有の湿気を含んだダークな感触のファンタジー。漫画の原作に合いそうな気がする。「エコエコアザラク」みたいな不気味な感じもあるのだが、独特の雰囲気とイメージが子供心に強い印象を残した作品。あんまり幼い子供には勧めない方がいいのだろうか。
しかし今回あるサイトにはお世話になった。大幅な児童文学をカバーしているデータベース「児童文学の部屋」。5に挙げた2冊はタイトルうろ覚えだったので、こういうサイトがなければ書名も作者も分からなかったと思う。感謝!
【過去のコメント】
[ポピー] [2003/12/27 21:36] [ MyDoblog ]
blue&goldさんってやっぱり本好きだったんですね。。。コドモに何を読ませてあげたらいいかな、っていうことで参考になりました。(っていってもまだ1歳ですけどね)私はあまり本を読まない子供だったんだけど、この五つの中では「はてしない物語」が好きで(きっかけは映画の影響)何度も読みました。本っていうのは読み終わった後の満足感で決まるんでしょうかね。
[blue&gold02] [2003/12/28 00:45] [ MyDoblog ]
いやぁ、参考になるセレクトだか自信ないです。
ただ、個人的には読書感想文の課題図書「低学年の部」とか「文部省推薦」とか、ああいうのって嫌いですね。一見難しいかなって思っても、子供の方が面白いもの分かってる気がします。って、子供がいたらまた意見も変わってくるのかな...
「はてしない物語」いいですよね。エンデの本は説教臭いけど、読後感がなかなか。
[MediHen] [2003/12/28 22:56] [ MyDoblog ]
1、2はウチでも小学生の娘にすすめたら、おもしろかったみたいです。ナルニアは、私も読み返し始めたら、一晩はまってしまいました。
3、4は中学生くらいにならないと難しいんじゃないかと思って、もう少し先に読ませようtご思っています。
5は知りませんでした。参考になります。
[blue&gold02] [2004/01/05 12:50] [ MyDoblog ]
古典はやっぱり下の世代にも読み継がれてるんですね。(それとも親御さんによるのかな。)
自分も何十年ぶりに読み返したくなってきました。


Comments
おじゃまします。子供に読ませたい小説ですかあ。1.M・エンデ「モモ」...これも面白いですよね、娘と読みたい。2.A・A・ミルン「くまのプーさん」ディズニーではまったく雰囲気伝わってませんよね。これに、フリッパーズの「Winnie the pooh mag cup collection」をセットで(笑)、3.J.R.R.トールキン「ホビットの冒険」。これは息子と、さらには指輪物語を原書で(夢)。周囲のポケモンキッズを後目に、親子マニア道だ。ここに上げられたもので、読んでないやつは急いで買いに行きます。(._.) φ メモメモ。
Posted by: yoshiii | 2004.03.29 at 09:44
本当に子供にいいのか自信が無いセレクションですが...自分の子供時代に読んで印象に残った奴ですね。僕の世代では定番どころで、江戸川乱歩シリーズとかもありましたが。あの内容が子供向けというのも凄い話ですね。そういえば、「ホビットの冒険」読みましたね~。
Posted by: bluegold | 2004.03.30 at 00:59