« December 2004 | Main | February 2005 »

2005.01.30

久多良木(社長)発言とその裏にあるもの

 少し前からネット上で、SCE(ソニー・コンピューター・エンターテインメント)の久良多木(久夛良木)社長が、PSPの不具合への質問に対して答えた内容の記事が祭りになっていた様子。この展開ってビジネス研究での数々の過去の典型的失敗パターン的なのが少し興味深かったので、紐解いてみる。
 
 まずは元ソースに当たるのが原則なので、ちょっと見てみよう。ネット上では、忍之閻魔帳さん 『素人がごちゃごちゃぬかすな」by 久多良木』が始まりらしい(言及記事集)。ただし、大元は日経ビジネス 2005.1.24号の記事(「それがPSPの仕様だ」 久多良木SCE社長、ゲーム不具合騒動を一蹴)。頭の方の1P記事で、実は買っていたけれど読み飛ばしてましたよ。
 
 短い記事なので、間の騒動についての解説記述を除くと、社長の発言の引用は2箇所だけ。以下の通り。
 
 
 (質問文の掲載はなし)
  
 「これが、私が考えたデザインだ。使い勝手についていろいろ言う人もいるかもしれない。それは対応するゲームを作る会社や購入者が、この仕様に合わせてもらうしかない。」
 
 
 (問題が指摘されるボタンだけは、他のボタンのように真下に検知部分がない。この点が画面が反応しないことがある原因ではないか。本誌の疑問に関して久多良木社長は次のように説明した。)
 
 「使用する液晶画面はこれ以上小さくしたくないし、PSP本体もこれ以上大きくしたくなかった。ボタン位置も狙ったもの。それが仕様。これは僕が作ったもので、そういう仕様にしている。明確な意思を持っているわけであって、間違ったわけではない。世界で一番美しいものを作ったと思う。著名建築家が書いた図面に対して門の位置がおかしいと難癖をつける人はいない。それと同じこと。」

 
 
 ポイントとなる部分は3箇所だろうか。
 
① 購入客が製品機能について不満を述べているのだから、「意図した仕様」であるか、「意図していない仕様」であるかは社内の問題であって(責任問題には関係するが)、問題の本質ではないことに気付いていない。顧客が求めている答えと上の答えの対象がずれている。
 
② 「僕の作ったもの」と、さも一人で作り上げた工芸品のように語っている。③にもつながるが、社長はあくまでも「経営者」であり、芸術家・製作者とは役割が異なる。
 
③ 自身(もしくは設計に当たった社員達)を「著名建築家」と同格化して語っているが、そもそも「著名建築家」ではないことに考えが及んでいない。しかも、日本でどうか知らんけれど、「著名建築家」だって建物の機能をあまりに満たしていなければ非難の対象となる現実がある。工業的な設計者であれば、必ず機能性の問題には細心の注意を払わなければならない。「世界で一番美しいものを作った」というのも、芸術家と工業的設計者の役割定義の混乱を示唆している。
 
 
 もともと、自身の発言がどのような影響を及ぼすかという冷静な配慮なんてトップに必要な資質が弱い人らしく、過去の記事を漁ると以下のような発言もある。
 
 
 IT Media (2004/05/19)  『久夛良木副社長、PSXの世評に「何言ってんだ」』
 
 5月18日に都内で開かれたソニーの経営方針説明会終了後、『「PSX」の世間の評判についてどう思うか』と報道陣に聞かれた久夛良木健副社長は「何言ってんだと思った」と語った。
 
 
 前後で矛盾した話をすることも多いようで、この記事でも 『先日のE3で公開したばかりのPSPについては「想定している利用シーンは家の中。歩きながらゲームをする人はいない」と言い切った。』 とか。「PSPの不具合は仕様だ」の記事でも詳細インタビューが掲載されていないので、おそらく記者氏にうまく誘導されたところもあるのだろうけれど、どうやらその時思ったことを口にしてしまう傾向がある様子だ。2003年4月14日号のAERAには、「プレステ王・久多良木健 ソニー社長への道」という記事もあって、マネジメントに携わる人間としての資質に疑問符が投げかけられたりもしていた。
 
 一方、どこに商売の種があるか嗅ぎ分ける才能は確かで、その才により会社へ莫大な収益をもたらした功績があるのは確か。ちえの和WEBページさん「コンピュータ偉人列伝:久多良木健」では、1999年の時点で既にプレステのライバルとして携帯電話を位置づけている先見の明について紹介されている。
 
 プレステ2開発中の同時期インタビューでは以下のように語っている。
 
 
 ASCII24.com 「これがプレステ2だ!―SCE久多良木健氏インタビュー―」
  
 
 エンターテインメントというのは人間の本質であってね、技術とかそういうことで四の五の言ってなくても、たとえば老人力を持ってる年寄りであろうがね、言葉をまだ覚えていない子供であろうが、誰でもダメなものはダメ、受け入れられないものは受け入れられない、受け入れられるものだったら言葉とか人種の壁を超えて受け入れられる。だからエンターテインメントというのは、広く人々にコンビンス(納得させる)するのがいちばん難しいジャンルなんです。(中略)われわれが向かっているのはそのいちばん難しいエンターテインメントなんです。
 
 
 確かに、ハードを叩くということは、ある種のエンジニアにとってはすごいクリエイティブなことなんだけど、それが目的ではないはずですね。エンターテインメントを最終的に享受する立場から見ればね。だから、われわれがライブラリやツールを作ってサポートしてるのは、ソフトを作っている人がいちばんエラいからです。
 
 
 とにかく新しい技術、新しいエンターテインメントを創り上げることに興味があるわけ。自分が何をやるじゃないのね。ぼくらはクリエイターじゃないから。そういうことができる環境をどれだけサポートしていけるかというのがぼくらの仕事。
 
 
 他に、PSXに関する記事中でも以下の通り述べている。
 
 
 ASAHIパソコン HOT NEWS(2003.9.1)
 「【久夛良木健副社長インタビュー】 ソニー復活と家電の未来を読み解く 
 第3回 注目の新製品「PSX」はこうして生まれた! 」

 
 
 BBナビゲータやPSXのユーザーインターフェースをデザインする上で、久夛良木氏が絶対に譲れない点としているのが、「リアルタイム性」だ。ゲームでは常識となっている「ユーザーの操作にビジュアルや音声が完全に追従する」ということである。 
 
 
 次世代AV家電が「押した瞬間に動く」ことがユーザーに与える衝撃は、ユーザーが機器を使い込んでいればいるほどハッキリする。ただ、普段から操作性について意識していないと、こうした「手触り」の問題には気が付きにくい。言われて初めて気が付く人も多い。そのため、「押した瞬間に動く」ことを理由にPSXを買う人はあまりいないだろう。しかし、逆はどうだろう?
 
 
 次世代AV入門機として買ったPSXの操作性に慣れたユーザーが、PSX以前のちょっともたついた操作性に納得できるだろうか。人間は、ちょっとした進歩には気が付きにくいが、ちょっとした悪化にはすぐ気づく。

 
 
 同時期の別インタビューでも、PSPの前段、PSXの話で以下の通り。 
 
 
 後藤弘茂のWeekly海外ニュース(2003.9.3) 
 「久夛良木健氏が語る、ポストVHSを狙うPSXのコンセプト」
 
 そうだ。何が違うかというと、操作感。今の家電のDVDレコーダでは、これまでのAV機器のクオリティに達していない。少なくとも僕らの世界にいる人は、マンマシンインターフェイスでは手触り感が重要だとわかっている。(中略) ゲーム機なら当たり前の、戦闘中にメニュー開いてアイテム取り直して、他のプレイヤと話すという、あのスピード感がない。
 
 
 家電とPSXに関する話では文脈が違うかもしれないけれど、考えのベースを体系的にまとめているのであれば、どれも今回のPSPの問題の本質にリンクする内容の発言で、もう少し冷静な発言ができる筈だったのでは?と思わされる内容。
 
 となると、問題源が全く念頭に無かったわけではないのだから、なぜ失敗の轍を踏んだのかというのは、結構勉強になる部分。ここを「技術屋に商売はできない」という一文で片付けるのはもったいないし、問題の本質を見失っている気もする。過去の大企業の失敗例に対する研究書が幾つか出版されているが、それらを通読すると会社が典型的な失敗に陥りつつあることが分かる。
 
 
 

大失敗!―成功企業が陥った戦略ミステイクの教訓
ジャック トラウト Jack Trout 島田 陽介

ダイヤモンド社 2003-05
売り上げランキング : 134,617


Amazonで詳しく見る by G-Tools

 
 
 まずは米マーケティング会社の社長が書いた本。内容の踏み込みが足りない気はするけれど、マーケティングを主眼に、幾つもの実例を元にして失敗を避けるための心構えが著されている。ソニーの最近のブランド戦略の誤りについても示唆に富んだ箇所があり、コンサル会社を「金持ちからむしりとる現代のロビンフッド」と痛烈に切って捨てる1章も痛快だけど、久多良木発言に絡むのは以下のパート。
 
 
 自社と自社の名声を課題評価して失敗したコダック: AT&T、ゼネラル・モーターズ、IBMと同じように、コダックもまた競争と新しい技術によって困難にぶつかった業界代表企業である。長期にわたる成功の歴史ゆえに、コダックは自社の名声とロゴを過信していた。したいことは何でもできると自惚れていた。 
  
 (GMの失敗例に対する)教訓-成功に気をつけろ、それなら何をやっても成功すると勘違いするな: 成功すると傲慢になり、傲慢になると失敗する。自己満足こそ、成功の敵である。必要なのは、客観性である。成功すると、人は客観性を失い、マーケットの求めるものより自分の主観を優先させてしまう。(中略)カスタマーの立場でモノを考える。自分の考えを押し付けない。世の中にはさまざまな考え方があるが、マーケティングで重要なのはカスタマーの考え方だけである。そのことを忘れてはならない。
 
 
 あくまでもブランド戦略の間違いとして書かれている文章だが、久良多木社長の発言の中心、「仕様」という言葉に対してかなり示唆的な内容となっている。特に発言の①の部分に対応する形で、カスタマーに対する客観性とプレステでの成功を背景にした自己満足の対比では、正に失敗の一つのパターンにはまり込んでいるのが分かる。
 
 同書では、有名なP&Gの歯磨き粉ブランド「クレスト」の成功から失敗への例を引いて、過去の成功の理由を教訓として決して忘れてはならない、「企業の歴史を忘れてはいけない」としている。この点では、過去の歴史が読み物として充実しているSONYホームページの以下の件が皮肉。
 
 
 第2部 第4章 第1話 「24時間サービス体制」
 
 森園(原文敬称略:放送業務用VTRの開発、販売を陣頭指揮した元副社長、現顧問)は、「売れれば良いというものではない。買った機械が動かなくなって、サービスを受けられなければ、二度と我々の製品は買ってもらえない。信頼してもらえなくなる」という信念を持っていた。
 
 
 
 先に挙げた社長の経歴を見ても、ゲーム機開発に時代の先を行く形で携わり、その後華々しい成功を収めたことから、その成功体験と自負が発言の引き金になっているのは確かだろう。そこを踏まえて、以前紹介したことのある次の本を読むと、さらに問題点が浮き彫りとなる。
 
 
 
名経営者が、なぜ失敗するのか?
シドニー・フィンケルシュタイン 酒井 泰介

日経BP社 2004-06-24
売り上げランキング : 4,155
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 
 
 ビジネス・スクールの教授による本なので、先の本よりも分析的で、いかに失敗を防ぐかという観点でも充実している。今回の件にもピッタリなのが以下の箇所。
 
 
 企業が成功すると、世間はつい経営者のおかげと思ってしまう。多くのインターネットCEOたちが当初もてはやされた原因の一つは、彼らの成功が会社の成功の原動力とみなされたからである。これは古典的な「帰属の誤解(成功の要因を指導者のおかげと誤解すること)」である。ここに新規事業についての大切な教訓がある。著名CEOやドリーム・チーム経営者をトップに据えたからといって、ビジネスの基本-(中略)本当の顧客に対する目配り(中略)-をおろそかにできるわけではない。 
 
 
 問題は、企業が”ナンバー・ワン”イメージを標榜し始めると、そもそもその企業をその地位に押し上げた資質を失ってしまうことである。向上心を失って、守りに入ってしまうのである。このように視線が内向きになってしまうと、社員が部外者に対する態度がすぐに変わり始める。慇懃無礼になるのである。
 
 
 自社の使命を過度に過度に思い詰めている企業は、常に”伝道師”になってしまう危険をはらんでいる。顧客のニーズを聞くどころか、顧客にニーズを押しつけがちなのだ。(中略)顧客ニーズを分かっていると思い込むどころか、顧客自身よりもそれをよくわかっている、顧客のほうもいずれ自分たちが勧めるものの素晴らしさがわかるはずだ、と考えるのだ。 
 
 
 これを見ていくと、先に紹介した本同様、発言の①の部分が③へと発展していく様子がよく分かる。成功体験が目を顧客の声へ傾けるべき耳をふさぎ、ついには「伝道師」=「著名建築家」と化す展開。さらに、同書では「失敗するトップの”七つの習慣”」をまとめているので、見てみよう。
 
 
 その1 自分と会社が市場や環境を支配していると思い込み、環境変化に対応しない
 その2 会社と自分を完全に同一視してしまい、公私混同してしまう
 その3 自分を全知全能だと勘違いする
 その4 自分を100%支持しない人材は排斥する
 その5 会社の理想像にとらわれ、会社のスポークスマンになりきろうとする
 その6 ビジネス上の大きな障害を過小評価して見くびる
 その7 かつての成功体験にしがみつく 

 
 
 情報は限られているので詳細な分析ができないが、その2=発言の②、その3=発言の③他、間接的に当てはまる項目も多い気がする。その後、同書は「ではどうやって失敗を防ぐのか?」というパートに入って行く。
 
 
 大きな失敗の前の小さな失敗: 企業が失敗する兆候は、鵜の目鷹の目で探し回る必要はない。いかなる”警告サイン”もそうであるが、問題はどこに目を光らせるかだ。メーカーの場合ならば、ちょっとした品質上の問題だ。
 
 
 経営者の性格に気をつけろ: 経営幹部がもたらす失敗の最も重要な”警告サイン”をもうひとつあげるならば、それは最も正確に定義しにくいもの、つまり性格上の問題であろう。(中略)DO保険を扱うトニー・カルバンは、まさにこの問題に目をつける。「DO責任における経営者の三大悪は強欲、友人びいき、そして否定です。」
 (中略)
 否定モードに入っているか、それともプロとしての立場を貫こうとしているのかがわかります。アナリストを頭に血が上ると、非常に洗練された人たちでさえ本音を漏らすのを私は何度も目撃してきました。主にAについて話したくてBについては関連してちょっと触れただけなのに、相手はBについて根掘り葉掘り聞いてくる。(中略)CEOがどう怒りの反応を示すかに注目してください。(中略)それがどれだけ相手の意向を無視した怒りの台詞であるかは明らかです。

 
 
 トップとは大変な立場だなぁと同情の余地もあるけれど、明らかに今回の発言が傾きつつあるソニーの様子を端的に表している。SCEの今回の「失敗の兆候」も、ソニーの社内文化を引いている部分があるのは確かだろう。
 
 
 「QUALIA――ソニーがソニーであるための力」
 ソニー(株)副社長 高篠静雄氏/月刊アスキー編集主幹 遠藤諭 特別対談
 
 
 開発者の個性がそのまま商品に出た時代: 私自身は、入社以来機械屋なんですよ。昔のアナログのテープレコーダの機械設計とかをやっていました。あの頃ってのは、機械屋は1人、多くても2人。それでキャビネットも全部設計するわけです。それと電気屋さんが1~2人。そのくらいのチームで商品ができていた。ですからもう自分で深く、デザインから商品企画的なところまでやった。最近は分散するじゃないですか、技術があまりにも横に広がりすぎていて。
 
 
 先の発言の②「僕の作ったもの」は、ここら辺を受けた発言でもある。そして同時に、時代の流れと過去の文化の相克が感じられる部分でもあって、上にも書かれている通り、「分散せざるを得ない」時代に対し、垂直方向のものづくりを維持する社内体制とのずれがソニーの落陽を産んだきっかけであると感づかせられる。
 
 
 日経BP 専門家の眼(2004.12.13) 
 「ソニースピリットはよみがえるか 第1回~失われたソニーらしさ」

 例えば、デフレが進展する中、水平分散型の開発・製造手法を取りコストメリットを追求する台湾・韓国勢の台頭によって、垂直統合型にこだわり続けたソニーが求心力を失った、というもの。アジア勢の勢いに焦りを感じたソニーの、戦略の混乱を指摘する声もある。
 
 水平分散型とは、半導体やソフトなど製品を構成するレイヤーごとにデファクトスタンダードとなっている汎用の低価格部品を集めて、一つの製品を開発・製造する手法。米インテルのプロセサと米マイクロソフトのOSを使うパソコンはこの典型だ。一方、半導体もソフトも自社製品を採用するゲーム機「プレイステーション 2」などは垂直統合の典型と言える。

 
 
 「ソニータイマー」の嘲笑が広く流通するようになった通り、まず品質面で会社の体制が素早く変化する市場に追いつくことができなくなった。個人的な経験でも、10年以上前から既にソニー製品の品質(デザインではなく信頼性・耐久性)は決して高くなかったと思う。それでも業績が良かったのは何故か?それは品質の悪さを補うだけの、新しい魅力(デザイン・新技術)を持った商品を次々に市場に打ち出していく開発力があったからで、その開発力が次に時代の流れに追いつけなくなったのが昨今。そして凋落が始まっている。
 
 
 日経BP 『描ききれぬ成長戦略、「利益率10%」構想の虚と実---ソニー』
 
 従来考えられなかったゲームとエレクトロニクスの融合」 説明に立った副社長の久夛良木健は誇らしげに語った。(中略)だが、機能の具体的な内容が分かるにつれて、徐々に熱が冷めていく。「既にある機能を1台にまとめただけ。何も目新しさがない」(JPモルガン証券の高田裕史)。そこに、かつて「イノベーション企業」と言われたソニーの気概は感じられない。(中略)派手な演出によって、一瞬、新鮮な驚きを感じるが、よく吟味してみると内容は平凡――。PSXは、今のソニーを象徴しているのかもしれない。
 
 「周回遅れ」。会見の席上、ある記者がこう表現すると、出井は気色ばんで否定した。この発言は、リストラの遅れを指摘したものだった。だが、ソニーの「周回遅れ」は、商品開発という心臓部でも起きている。それでもソニーは、競合他社との競争に勝ち抜き、営業利益10%という公約を果たせるのだろうか。「(出井の)構想は壮大だが、実体を見ればそれほど進んだ会社じゃない。ビジョン先行の出井さんと、現場の感覚が乖離している」(若手開発者)、「正直、なぜこんなにイメージがいいのか分からない。世間の見方と現実が違う」(ソニーマーケティング社員)。


 ライバルに比して技術開発に力を注ぐことを怠り、先達が築いたブランド・イメージを食いつぶして現在に至る中、過去の歴史に学ぶ必要があるのは確かだろう。「ソニータイマー」の汚名に甘んじていた時代に対して、ソニーの名を高めた源流、ウォークマンにまつわる社史を読めば、改めて品質管理の基盤を再構築する必要性が見えてくる。
 
 
 第2部 第6章 第1話 「理屈をこねる前にやってみよう」
 
 
 この、いまだ世界中のどこにも見当たらない製品の第1号機を作り上げるにあたって、大曽根にはどうしてもこれだけは譲れないということがあった。「初めて世に出してコンセプトを問う1号機に、故障があっては絶対に駄目だ。故障が多いと、そのコンセプト自体が否定される」。大曽根は、それまでの種々の経験を通して、そう確信していた。

 それに今回は時間も限られていた。盛田も「金型は流用すればよい」と言った。そこで第1号機のメカには、すでに50万台の生産実績のあるカセットテープレコーダー「プレスマン」のメカをそのまま流用した。1号機が変わりばえしなくても、ある程度不格好でもよい、それは続くモデルで挽回できる。だが、故障しやすいというイメージを、1号機で植え付けたら終わりだ。1号機の役割は、何よりも、新しいコンセプトを世に問うことなのだから。

 この1号機開発には、技術的な苦労はほとんどなかった。既存の技術を組み合わせて、信頼性を最重視してまとめ上げることにすべての力が注がれた。
 
 
 
 先に挙げたような失敗例を踏まえても、今後取るべき方向性ははっきりしている。特に、久良多木社長は先のインタビュー他でマイクロソフト社を批判しているが、その批判対象から学ぶべきところも多い(以下アキバBlogさん経由)。
 
 
 独FOCUS誌 (1995.10.23) ビル・ゲイツ インタビュー 
 「マイクロソフトのコードにバグはない (Microsoft が思っている限りでは)」
 
 「ちがうって! ぼくらがリリースしたソフトウエアには、多勢の ユーザが直してほしいと思ってるような重大なバグなんてない。」「ちがうって! もしきみがそれを本当にバグだと思ってるのなら バグを報告すべきだ。もしかすると、 きみは適切に使ってないんじゃないか? このことを考えたことがあるかい? 」「ラッダイト主義者はソフトウエアを適切に使う方法を知らないから、 よく調べなくちゃいけないよ。」

 
 ITプロニュース 日経Windowsプロ (2004.9.29)
 『Windows XPに「勝手にパスワード情報を送信する危険性」が見つかる』 
 
 この危険性に関して,マイクロソフトのセキュリティ・レスポンス・チームに確認したところ,これはバグではなく,基本的には仕様なのだという。
 
 
 ここにも登場する便利な言葉、「仕様」!驚くべき一致ではないですか。マイクロソフトが凋落の手前にいるかどうかは別として、その前兆となる「傲慢さ」という観点では恐ろしいほど発言の内容が似通っている。久多良木氏が「彼らのセンスのなさには愕然とするね」と切り捨てたマイクロソフト社の事例を他山の石として学ぶことも多いんじゃないですかね?
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

輝いてませんが、参加しておきます

 
URL: http://bluegold.cocolog-nifty.com/
タイトル: 加州の空の下、音楽は流れる
作者ハンドル名など: bluegold
推薦コメント: 輝いてませんが、参加します。内容は脈絡なく、米国生活、日本の生活、音楽、映画、本、どうでもいい話等。

  
 
 ネットのあちこちで、「輝く!日本ブログ大賞 2005」という企画の話をあちこちで見かけました。おそらく、一昨年話題になった「ブログ of the Yeah! 2004」の開催が無かった辺りを踏まえての企画だとは思うんですが。(それを受けてのこんな話もありましたね。)
 
 最近他にも幾つか立ち上がっている企画もあって、「日本のアルファブロガーを探せ2004」中間報告)とか、「ブロガーが選ぶブログ大賞」とか。「ブログ of the Yeah!」みたいに人気も内容も優れたものを選ぼうというのが普通の発想だと思うんだけど、「無名でも内容がおもしろいブログを発掘したい」というのはいいですね。「日本レコード大賞にあたるような」というネーミングセンスは微妙な気がしますが...

 「とくに、オリジナリティのあるブログ!、フレッシュなブログ!、がんばってるブログ!」というどれに当たらないのも辛いわけですが、ココぐらいのでも参加できるということで、これを読んだ皆様も参加してみてくださいな。参加母数が大きくてなんぼの企画だと思いますので。
 
 さて、おまけに過去にネットのどこかで大きかったり小さかったり反響があったエントリーの中から抜き出したリストを付けておきます。時間があって気が向けば、それ以外の「自薦よりぬきリスト」も付け加えるかな。それにはまだまだエントリー不足の気はしますが。
 
 
 
 過去の被言及エントリーの中から幾つか
 
 2003.12.15 「指名手配してみる」
 2003.12.28 「子供に読ませたい児童文学を五つ選べ」
 2004.01.30 「アメリカの鉄道事情: 観光列車の巻」
 2004.02.12 「Mr. Gooに尋ねてみよう!」
 2004.02.21 「日本の音楽産業の将来展望」
 2004.03.12 「ビックリ系フラッシュの共通点」
 2004.03.20 「メア」
 2004.03.26 「世界征服への道」
 2004.03.28 「CCCD賛成派6割とか」
 2004.04.10 
 「自分史上もっとも偉大なアルバムベスト50」を選ぶ 【TB募集中!】
 2004.11.17 「iPodシャッフル機能の都市伝説」
 2004.11.19 「ジョークを読み解く」
 2004.11.24 「雨が降ったら走るべきか」
 2004.11.28 「あやうし!ドナルド! (本名 ロナルド・マクドナルド)」
 2004.12.16 「理系 vs 文系」
 

| | Comments (0) | TrackBack (4)

きかんしゃトーマスとなかまたち

 チーズを買いに近所の輸入食材屋まで出かけたら、バーバパパとか子供向けの海外キャラのお菓子が山積みに。チーズ選びで延々と悩み続けるかみさんを尻目に、暇だったもんで眺めてると「きかんしゃトーマスのなかま」キャラでやたらに「ハロルド」って奴が幅を利かせてます。
 
 
 ヘリコプター・・・? そんな奴いたか?・・・ ということで、ちょっと検索。
 
 
  きかんしゃトーマス@ホームページ博物館
 
 
 ここの「きかんしゃトーマスとなかまたち」という項目の写真入り紹介を眺めると、います、確かに。トーマスたちと「なかよし」だそうです。ここの「なかよし」って結構ポイントで、「トーマス」に登場する機関車その他達って、結構、陰険、自分勝手等々、協調性・社会性がない奴が多いんですよ。
 
 トーマスもかなり生意気な奴だし、他の機関車も態度がでかいでかい。貨車は機関車と仲が悪くて、足を引っ張ろうと虎視眈々だし。子供の頃絵本で読んで、何て嫌な奴らだと思ったけれど、今となっては社会の縮図を皮肉まじりに書いている英国らしいセンスも大人に受けたんだろうなと分かる気がします。子供は、そんなところよりもキャラ立ちしているところに惹かれるんだろうけれど。
 
 
  きかんしゃトーマスとなかまたち オフィシャル・サイト (ヒストリー)
 
 
 元々の絵本は、生まれが1945年と古いんですな。僕の世代はオリジナルの絵本で育った口だろうけれど、その後、映像化されて世界に人気が広がったということらしい。当時、平日の休みの朝に、ポンキッキーズで模型アニメーション見た時はオ~ッって思いましたよ。古典絵本がアニメ化されて人気が出て、登場キャラも増えるという辺りは、「アンパンまん」と同じパターンでしょうかね。ちなみにこいつが日本でも70年代から出版された、オリジナルの絵本。
 
 
  きしゃの絵本 
 
 
 ちなみにアメリカでも、トーマス大人気です。おもちゃコーナーのプラレールみたいな奴にガキ供張り付きまくりだし、友人宅のお子様も大好きでしたなぁ。
 
 
  きかんしゃトーマスのおもちゃ
 
 
 と、お話を再現した倒木出現の「あ!あぶない線路」なんてのもあるらしい。商魂たくましいですな。元々、この木製のトーマスおもちゃ、アメリカのLearning Curve社というところの製品。本社所在地、イリノイですか。アメリカではかなり広く流通しているおもちゃなんですよ。
 
 以下のホームページによると、Learning Curve社は1993年設立。だから、40年代~ イギリスで絵本のベストセラー → 70年代 日本でも絵本出版 → 80年代 アニメ化 → 1990~ 日本でもアニメ放映開始 → 1993~ アメリカでおもちゃ化ブレーク、ってところでしょうか。ちなみに、Learning Curve社は、その後M&AでR2C Corp.という会社になっているそう。
 
 
  Learning Curve | About Us
 
 
 おもちゃのみならず、自作で舞台の再現パノラマを作っている方も見つけました。すげ~。他にも、ネット上に鉄道模型の改造でトライ!な方がいる様子です。
 
 
  ソドー島 島めぐり
 
 
 さて、最後に最初のページに戻りますか。ヘリコプターどころか、アニメ化されたトーマスのなかまにはイカしたキャラ達がいっぱい出てくるんですなぁ。
 
 
  
  ディーゼル: 
  軽油を燃料にして走る機関車です。局長の事を「ふとっちょ」と呼びます。

  ディーゼル261:  
  よそから来たディーゼル機関車。自慢ばかり しているので嫌われています。

 
 個人的なツボに入った紹介文。いるよなぁ、「自慢ばかりで嫌われている」タイプ。自分も気を付けなきゃ。
 
  
  スマージャ: 乱暴で皆に迷惑ばかりかけていた機関車。
          わざと脱線ばかりしていたので、発電機にされてしまいました。
  バルストロード: 港で働く船。意地悪貨車達に沈められそうになりました。
  シリル: 霧が発生した時に、線路に起爆装置をしかけて危険を知らせます。
 
 
 え?辺りはテロリストで満載すか?
 
 
  スプラッター: 
  劇場版「魔法の線路」に登場。意地悪で暴れん坊のディーゼル10の子分。

 
 
 名前通りに、人を轢き殺しまくったりはしないようです。
 
 
  セレブリティ: 
  最新型の機関車で、160km/hで走ることができる。とても有名。

 
 
 最近のにほんのみんなに、本当の「セレブ」とは何かを説教していただきたいものです。
 
 
  ボルダー: 大きな岩です。
 
 
 何だそりゃ?

| | Comments (0) | TrackBack (2)

取るに足らない悩み in 職場

 何だか休み無しの日々だったので、本ブログもまた断筆期間が出来てしまいました。ま、最近、休み休みの進行ではありましたが。
 
 さて、この場では趣味と個人的な興味をベースに書いているもので、仕事等の話はいっさい無しで来たんですが、最近ちょっとした仕事の悩みがあるんです。いいアイデアがあったら誰か教えてください。
 
 
 え~、今の職場には元々同姓の人が結構いて、特にAという苗字の人は3人もいます。仮に、A1、A2、A3さんとしておきましょうか。どうやら近くに異動があって、一つの係のメンバーにAさんが集結するそうです。マトリックスのエージェント・スミスみたいに係にAさん増殖。「ナニナニ係のAさん」って聞かれても、「全員Aですが?」となるわけですね。
  
 そして、A1さんの後に、新たなA、A4さんがやって来るそうです。Aさんの後のAさん。2つの係のチーフが両方Aさん。おまけに片方は前任も後任もAさん。う~ん、ややこしい。皆、近い場所に固まって座るんですよ。「Aさん!」と呼ばれると、4人が一斉に振り向きそうです。
  
 さらに、A4さんとA3さんは名前のつづりまで全く同じです。下の名前で呼んでも、区別がつきません。電話がかかってきた時の対応が苦しいところです。どうしたらいいんですかね?「ミドルネームでも付けたら?」というふざけた意見もあったんだけど、こういう時はアメリカのニックネームで呼ぶ風習って便利だったなと思ってしまう今日この頃です。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.01.18

2004年を振り返って思う:大統領選

 年の変わりってのをあまり節目と感じない性格なんですが、たまには過去を振り返ってみましょうか。
 
 
  今年も色々ありました 笑えるサイトで振り返る2004
 
 
 元々、タイトルに偽りアリと感じる「笑えるサイト」なんだけど、上記の記事による2004年のトピックとは以下の通り。
 
  
  ・架空請求/「無視出来ない架空請求」を知る
  ・台風上陸数が10個と過去最多。台風23号では死者が80人を超えた
  ・負け犬ブーム/シングル1670人の「自由と不安」
  ・プロ野球再編問題/猿でもわかる選手会ストQ&A
  ・長崎県の小学校で、6年女児が同級生の首をカッターで切り殺害
  ・震度7も観測された新潟県中越地震。避難者は一時10万人を超えた
  ・年金問題/年金いつから、いくらもらえる?
  ・俳優の窪塚洋介が自宅マンション9階から転落し重傷。11月に復帰

 
 
 「笑えるサイトで振り返る」って、「笑えない」話ばかりと思うわけだけど(かろうじて一番下のぐらいか)......それが災い続きだった2004年ってことなんだろう。代わりに少しは笑える動画にリンクしておこうか。
 
 
  2004 Voting Machine
 
 
 ここら辺の背景を踏まえているとより面白いけれど、逆に今度は笑えない人も多くなってしまうかもしれない。
 
  
  暗いニュースリンクさん (01/08/2005)
  「過去100年間で2度目:米上院・下院合同議会でブッシュ大統領再選に異議申し立て」
 
 
 昨年は、約半分をアメリカで過ごし、半分を日本で過ごした少々特異な年であったので、2つの観察点から眺め社会現象には感銘を受けたこともある。やはり個人的に大統領選というのは2004年の一大トピックだった気が 。日本帰国後に出た選挙結果を受けて、ネット上で「メディアはケリー優勢って言っていて、そんな話聞いていなかった」というような意見を目にしたことがあるけれど、アメリカ国外と国内の温度差が激しかったのも、2箇所から見る視点の違いを意識させる部分だった。
 
 実際接戦だった選挙戦。今回の選挙戦ではかつて無いほどに国内の意見も二分されたという話があって、自分が暮らしていたリベラル側の土地柄から眺める様相というのも興味深かった。そうした話ならば、この辺り。
 
  
  Sorry Everybody
  
  
  町山智浩(アメリカ日記)氏 「飛び越される州の逆襲」
 
 
 日本のメディアも全体的に希望的観測で「ケリー有利」な話を取り上げていた感じを受けた。これは多少なりともアメリカのメディアにも言えたことだと思うけれど。町山氏同様、僕の住んでいたサンフランシスコ周辺のベイエリアと呼ばれる地域はアメリカの中ではかなりリベラルなお土地柄で、ほぼブッシュ嫌いの人間しかいないと考えていいような環境。確かに、シリコンバレーの経営者には結構共和党支持者もいるし、郊外から離れていくと民主党支持者ばかりとは言えないという部分はあるのだが。
 
 ただし、そうした環境の中にいても、「ケリーでは勝てないんじゃないか?」という声をよく聞いたのも事実で、結局、何が選挙結果を決めたのかというのが、以下の特集を眺めていると興味深い。
 

  Newsweek Election 2004 "How Bush Did It"
  

 残念ながらサイト上の記事は紹介のみだけど、選挙後に記事にするとの約束で長期同行した記者達がまとめた1年間のドキュメントで、日本版でも11月17日号に掲載されている。この記事で興味深い点は幾つかある。まず、ブッシュ陣営のスタッフの老獪さで、ケリー陣営の脚をうまくすくい、選挙戦を有利に進めていく姿が描かれている点。対するケリー陣営は、終盤に民主党に歴史的な大勝をもたらしたクリントンとそのスタッフが乗り込んでくるまで、もたついている様子がありあり。
 
 実際、ブッシュ側がうまく様々な票田を切り崩したのは結果からも明らかで、プロテスタントのブッシュ、カトリックのケリーという構図に対して、中絶・同姓婚禁止を打ち出してカトリック層を取り込み、教育・所得水準の高い層を狙ってヒスパニック層を取り込み(特に、@フロリダ・テキサス州)、本来民主党支持者が多かったアフリカン・アメリカン層や女性層もうまく取り込んで得票を伸ばしている(選挙戦1ヶ月前の「政治経済研究共同センター」の調査でも、アフリカン層のブッシュ支持率は4年間で9→18%に倍増)。
 
 「保守化や宗教回帰が共和党勝利の主要因」との見方にも、40年前には民主党の牙城だったテキサス州の例を挙げ、逆に民主党が支持者の思いを無視して離れて行き、共和党がうまく左寄りの層を取り入れた話があったりする(日経朝刊2004.12.11 地球回覧)。変わったのは有権者側ではなく、民主党側というお話。先のNewsweeekの記事にも印象深い一節がある。
 
 
 ブッシュ陣営からみれば、ケリーと側近は根本的なまちがいをしていた。さまざまな争点についての候補者の考え方ではなく、有権者が本能的にかかえている関心事によって勝敗が決まることを、ケリー陣営は理解していなかった。  
 
 
 人の相談を受ける時、こちらの意見を滔滔と述べるのではなく、相手は既に形にならない答えを心の中に持っているので、それを引き出し形にするよう話を聞いてやるべきという今流行のコーチングの話とかを思い出すが、同時に、形にならない思いが影響するということは、政策論ではなくイメージや印象論が大きく影響するということでもある。有名な心理実験で、人の印象は冒頭の第一印象で決まり、その後、どのような内容の話をしたとしても評価が変わることはないという研究結果が幾つかあるけれど、ケリーやブッシュに対しても同じことがあったようにも見える。
 
 ケリーは「探究心が豊かで慎重な思索家」でもあったけれど、理性的で慎重に考え過ぎることが優柔不断さにつながって「決断力の無さ」というイメージにつながった嫌いがある。実際、反論や意見表明のタイミングを逃した大きな局面も幾つかあった。

  
 インテリで理屈っぽい性格があだになった。スピーチライターが受けのいい言葉を書くと、ケリーが「スローガンじみている」と言って消してしまう。しかもケリーは何度も同じことを言うのを嫌った。政治家としては深刻な欠陥だった。ブッシュは、何度でも同じせりふを繰り返した。 
 
 暗がりでスポットライトが点滅し、「ロッキー3」のテーマが響き渡るなか、ブッシュがさっそうと登場すると、1万人ほどの観衆が大歓声を上げた。「このイベントの演出係を見つけて、給料を上げてやろう。」ブッシュはそうジョークを飛ばし... 
 
 
 Newsweekのロッキーのくだりを読むと、それこそ「アホでマヌケなアメリカ人」を思い出してしまうけれど、元々、「まじめ」や「教養」よりも「気さくさ」を重んじる傾向があるアメリカ人にとって、どちらがアピールするのかという点では興味深い。「まじめさ」をより重視しそうな日本人との違いを思う一方で、どこかの都知事が人気を得るような中、政策での中味はなく、印象で全てが決まるのはどこも変わらないというのもある。

 ケリーのイメージで足を引っ張ったのは、「堅物」との印象の他に2つ。まずが、スピーチ能力の低さ。いつもグダグダ長々とインパクトの無い話をして、決断力の無いイメージを増幅させた。もう一つが、家族。テレサ夫人の持つ資産は10億ドル(百億円のオーダー)以上、2003年の所得申告は500万ドル。特権階級の人間という印象がつきまとった上に、彼女自身、自意識が強くて、選挙戦のため全てを捨てるというタイプでなかったため、不機嫌さや周辺の人間との衝突ぶりがbi*chと呼ばれそうな悪印象となったようだ。
 
 イメージというのは恐いもので、ブッシュとて特権階級の人間で、実際自身もそういった意識の下、振舞っている。M・ムーアが描く「笑えるほどアホな大統領」のイメージと比べて、本当のところはどうなんだろうか?Newsweek内でこう書かれた本を読むと興味深い。
 
 
 この本を読むと、ブッシュ政権の指導者は他の選択肢をろくに検討もせずに戦争への道を突き進んだように思えるが、読み方によってはブッシュの決断力の強さの印象が残る。
 
 
 

攻撃計画(Plan of Attack)―ブッシュのイラク戦争
ボブ・ウッドワード 伏見 威蕃

日本経済新聞社 2004-07-15
売り上げランキング 13,957
おすすめ平均 

Amazonで詳しく見る
  by G-Tools

 
 
 全体的に客観的に書こうという試みが目に取れる一方で、パウエル達には多少好意的、チェイニーとラムズフェルドにはかなり批判的で、ブッシュについても微妙に批判的なトーンが見え隠れする感じ。訳者はあとがきでブッシュの粘り強さに言及しているけれど、実際に読んだ感想を言わせてもらえば、大統領という立場にあるべき人間ではないと批判されるような部分が満載。
 
 「他人の意見に耳は傾けるが、相談はしない」とされるブッシュが、部下達にはっきりと意思を伝えず、周りが考えを読み取ろうと憶測や先走りで対応する様子が描かれており、結局、事態はイラク開戦へと後戻りのできないような方向へ自然に流れていく。あまりにも薄い内容の言葉しか発されておらず、決断が及ぼす影響について部下達の進言を理解している素振りが無いし、どうも「決断力の強さ」「粘り強さ」というのも余り感じられない。真剣に考えていないが故の判断・振るまいのように見受けられる。
 
 著者の書き方・スタンスもあるので客観的に見る必要があるとは思うのだけど、「真剣に考えてねぇよな」と部下に愚痴られるのが世のサラリーマンの常ながら、ある程度まで上司がどれだけ深く考えているのか見えてしまうということはどうしてもある。真剣に考えたり下勉強しないで示す決断力なんて、悩みが無い分、楽だよなと思う一方で、思慮深さと同時に人に与える印象の操作も考えなければならないのだと思うと、管理者の悲哀も感じてしまうところ。
 
 でも、だからといってブッシュを支持する気には全くなれないけれど。「攻撃計画」の締めのブッシュの言葉が、お気楽さを表している気がする。
 
 
  「歴史か。わかるものか。そのころには、われわれはみんな死んでいるよ。」
 
 
 「三国志」等、史書に登場する人間も、「死しても名を残そう」とたちふるまったりするんですがね。後世の評価を気にしてノイローゼになるようなタイプじゃないから、少しは気にして欲しいものです。世の中のために。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.01.16

「動物のお医者さん」に見る人の歴史

 デポログさん経由(エントリー「松尾淳」)で知った「日本の苗字7000傑」というサイト。今まで知らなかったんですが、いやぁ凄いデータベースで、ひたすら感心。自分の苗字もクルクル回る印鑑スタンドに入っているか入っていないかで、今まで親戚を除いて面と向かって会った同姓がいない気がするんですが、意外と高順位でしっかりデータに入ってました。
 
 感心したのは、ルーツの記載が正にビンゴだった点。どの苗字がどこから生まれたのかを眺めてみると面白いです、このサイト。と言うことで、コイツの登場人物を拾ってお遊びで調べてみました。
 
 
  

動物のお医者さん (第1巻)
佐々木 倫子

白泉社 1995-12
売り上げランキング 34,878
おすすめ平均 

Amazonで詳しく見る
  by G-Tools

 
 少し前のチワワ人気同様、ハスキー人気のきっかけとなり(ついでに捨て犬も増えたというのは無責任な飼い主のせいですが)、舞台となっている北大獣医学科人気のきっかけとなった、少女漫画連載ながら幅広い支持を受ける名作です。誇張された独特のテンポの笑いに対して、取材がしっかりしているのか、動物の描写や理系の研究生活もリアルな部分を踏まえていて奥行きがあるのがいいんですよね。ちなみに少し前のTVドラマは、よしておけばいいのにという出来だった模様。
 
 関係ないですが、最近子犬の一団と遊んでいたら、「犬に嫌がれるのは、菱沼さんそっくりの独特のテンポのせいよ」と皆に言われてプンプンな今日この頃であります。
 
 
 さて、どうでもいい話は置いておいて調べてみましょうか。
 
 
 jmap2
 
 
 元データはこんな感じ。

 西根(=変なメンバー達にも動じない主人公)
 6435位 羽後国仙北郡西根邑発祥、出自不詳。現在、秋田県北秋田郡阿仁町に多い。

 二階堂(=主人公といつも一緒の親友)
 1365位 相模国鎌倉郡二階堂発祥、藤原南家伊東氏流。ほか秀郷流、中原氏など。
 
 菱沼(=研究室に居つく、かなりマイペースな先輩)
 1706位 藤原氏、菱沼駿河を祖とする。柳本藩にも存す。
 
 漆原(=登場人物達を振り回す、やりたい放題な教授)
 1868位 上野国群馬郡漆原邑発祥、藤原氏。磐城平藩、阿波、讃岐、信濃にも。
 
 菅原(=漆原と同窓の英国紳士な教授)
 88位 大和国添下郡菅原庄発祥の中古以来の大族、全国に広く分布。
 
 清原(=主人公と同級生のかなりマイペースな男)
 1188位 公家清原氏は天武帝裔。ほか清原連、海宿禰、紀氏、滋野氏などの異流も。
 
 綾小路(=タカビーな菱沼の天敵同級生)
 38535位 公家綾小路家は宇多源氏。
  
 阿波野(=主人公の同級生)
 11637位 日向発祥か、出自不詳。現在、宮崎県延岡市などに多い。

 高屋敷(=上司の漆原に振り回される優秀な助教授)
 4818位 各地の高屋敷の地名より発祥、出自不詳。現在、岩手県、青森県等に多い。
 
 鬼丸(=漆原、菅原が学生だった頃の助教授)
 4469位 豊後国海部郡鬼丸邑発祥か、出自不詳。現在、福岡県に多い。


 記憶が定かじゃないんだけど、そういえば阿波野達って帰郷して九州の動物園で働いているって設定だった気が......
 
 調べてみると、多いかと思っていた「阿波野」姓が意外に少なかったり、「鬼丸」姓が意外にいたりして面白いです。「綾小路」姓は漫画におけるああいったキャラの典型なのでパロディ的ではあるんだろうけれど、日本に約50人しか実在しないんですなぁ、へぇ~。その他のキャラ、「亀松」「神矢」「嶋田」は6万弱の苗字を含むデータベースでもヒットしませんでした。後2者は「神谷」「島田」にデータ上含まれるんだとは思いますが。
 
 
 
おまけ
 
 日本人のほとんどの家系をたどれば源平に行き着くとか、皆、見栄を張って適当に貴族の出自をくっつけて作った家系図が残っているとかあるんですが(ちなみに僕の場合、平家側、負け組だそうです。どうせ本当のご先祖様は農民でしょうがね。)、源氏や藤原氏等の家系を調べたいのならばこのサイトはいかがでしょうか。
 
   家系図の倉庫
 
 
 アメリカの場合、苗字関係のサイトが見つからなかったので、とりあえず名前側のサイトをご紹介。意味を中心に名前の由来、民族の出自が分かるデータベースです。 
 
   Baby Name Finder
 
 

| | Comments (71) | TrackBack (10)

2005.01.15

隣の受験生は何食う人ぞ

 巷で話していると「息子(or娘)が今年受験でねぇ...」とシーズン到来な今日この頃、受験なんて遥か昔の話で最早感慨も無いぜと思っていたけれど、よく考えてみたら数年前にアメリカの大学院受験でバタバタしてたんだよなぁ。と、日本の受験風景とアメリカの風景がリンクしないところもあり。
 
 さて、日本にいなかった間にこんな話が産まれて、定説に近いぐらい流通するようになっているんですな。
 
 
  キットカットで、きっと勝つ 受験生に大ブーム!キットカット
 
 
 ネスレが今年大々的に打つキャンペーンを見て知ったんだけど、売り上げも急増だそうで。他の会社も2匹目のドジョウを狙ったりしていて笑える。
 
 
  サンクス 受験生フェア
 
 
 ロッテも必死。「パス」はアリな商品名だけど、「幸運のコアラ」話のおかげか引っ張り出された「コアラのマーチ」、「寝てても落ちない!」って今さら努力を否定されても何かと思うわけですが。そもそも、「キットカット」も最後の「ト」の行方がどうなのよと気になる性分なもので、「カット」じゃ「足切り」につながんないの?と嫌なことを言ってみたり。
 
 
 さて、gooの「受験生の願掛けランキング」なるものによると(孫引き:club mik
 
 
 受験生ジンクス ランキング
 
 1位 手に5を書く
  (←5を書く=ゴヲカク=合格)
 
 2位 佐川急便のトラックの飛脚マークのお尻に触る
  (←昔の幸福になる噂の変形バージョンか)
 
 3位 右から
  (←鉛筆を取る時右からとか、同じ方向から全て動作するということの様子、
  こんな感じか
 
 4位 受験校の前で5回手を合わせる
  (←何だか社寺と同格化しているお話、神頼みってか)
 
 5位 試験前日にスパゲティを食べる 
  (←試験に「パス」た?)
 
 
 関連アイテム ランキング
 
 1位 キットカット
  (←既記の通り)
 
 2位 赤いパンツ
  (←めでたい紅白色ってことなのかな?)
 
 3位 5角鉛筆
  (←5角=ゴカク=ゴウカク)
 
 4位 タコのグッズ
  (←オクトパス=置くとパス)
 
 5位 スパイクのピン 
  (←「スパッと行く」ですか?こういう駄洒落、苦手です)
 
 
 
 やはり、キットカット強し。でも、何と他のはほぼ全て知らん。元サイトには「昔ながら?」なんてコメントもあるけれど、本当に知らんです。パスタなんて、カツが昔は縁起物って言われていたけれど、実は胃に負担がかかるから、消化のいい麺類に無理矢理移行したのかな?って気はするけどね。タコのグッズって「置くとパス」だけど、当日は変なもの机の上に置けないよな~。受験前までの机の上に置くのかいな?
 
 
 元々、"jinx"は「縁起の悪いことの言い伝え」ながら、日本語の「ジンクス」としては「縁起のよい迷信」も含んだ意味にシフトしていて、上の「ジンクス」が全てポジティブな方向の話というのも面白いところ。昔は「滑る」「落ちる」を受験生の前では言ってはならないといったネガティブな「ジンクス」の方がメジャーだったんじゃないかな。僕は知らなかったんだけど、「富士山が見えると試験に落ちる」というのもあるらしい。
 
 
  はてしない日記 さん 「カルシウム不足」
 
 
 コレ、一瞬「そもそも富士山って縁起物じゃないの?」って思ってしまうところがミソで、東京じゃなく、大阪や名古屋の言い伝え。つまり、「新幹線で上京」→「富士山脇を通り抜ける」→「この時期天気が悪いことも多いので、確率の低い方=不吉」となったって辺りか。今だと「飛行機で上京」ってパターンもありそうだから、少し前に発祥がありそう。新幹線を含めて、車窓からの眺めがベースにあるんだろう。
 
 しかし、ついでに見つけたこの1行エントリーが面白かった。
 
 
  AnotherDaysDiary さん 「ジンクス」
  
  試験の前に「がんばって」と云われたら試験に落ちる。
 
 
 ほぼ確実に言われる気がするんですが......
 
 
 さて、こうしたネガティブ・ジンクスに対してポジティブなものが目につくのは、時代の流れというのもあるかなと。先に挙げた「滑る」等の忌み言葉というのは、特に結婚式のスピーチ(切れる)あたりで有名かと思うけれど、最近昔ほどに厳しく言われなくなって来ている気もするし。記録が残っている量が少ない古代のイメージから、激しく移り変わる言葉や風習の流動性を忘れがちだけど、あまり合理的とも言えない風習はゆっくり廃れていくんですかね。
 
 一方で、禁忌というのは民間信仰と結びついて伝承されて来た息の長い部分もあって、御伽話の中の異種交配のタブー(「浦島太郎」「鶴の恩返し」等)とか、養蚕業者は卵を食べないとか。時代をさかのぼり、人間の生活のベースが低次のレベルにあった頃から最近まで、原始的かつ根源的な欲求である「性」や「食」に禁忌が集中しているというのも自明なところ。
 
 そういう意味では、「食」のジンクスであるキットカットも自明の流れなのかな。「受験」のような社会的制度が背景にある迷信が広く流布されるというのも時代の移り変わりを思わされるけれど、逆に昔から登用試験みたいのがあったってことは同じような迷信も存在していたのかとも思える。こんな感じに、現代にもつながっていく言葉の迷信があればちょっと面白い。
 
 脈々と続く禁忌ということで言えば、「デジタル、ネットワーク時代の禁忌」として「見てはいけない開かずのページ、30年に一回ご開帳されるご本尊ページもアイデアとして悪くない気がする。」と書かれる時点で、もう既に幾つもの「見てはならない呪いのサイト」が存在しているわけだから、人間の考えることなんて大して変わらないし、だからこそ、周期的にいろいろなジンクスが発生していくのだろう。
 
 
 さて、もう一点面白いのが、キットカットというお菓子にまつわる迷信であること。日本でコンビニの棚で覇権を争う飲料や菓子の業界は、激しい淘汰に晒される市場の上に成り立っているため、マーケティングもかなりの手際が必要。火が付き始めたジンクスに油を注いで売り上げにつなげる手際といえばアッパレではないですか。
 
 元来、クリスチャンの祝い日であって、風習も本来は異なるクリスマスやバレンタイン・デー。どちらも日本で派手に定着させるようにしたのは菓子業界の業績ですからねぇ。新たに受験シーズンに狙いを定めて、商売の種にしようという根性は大したもの。
 
 大枚をはたかなければならない入学祝いを控えて、手頃に買えるプレゼントの価格帯というのもいいんですかね。こうなるとダメージを受けるのは、絵馬や学業成就守を売る神社・寺?その内、今度は手を組んで、お菓子とお札のコラボ商品とかも出てきたりして。
 

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2005.01.13

ちょっと怖くなりました

 例の事件で、性犯罪の再犯防止の議論をあちこちで見かけます。ワイドショー・コメンテータの適当な意見から法制度の話まで。元々、アメリカでも議論の種だったミーガン法がよく引き合いに出されているようです。(しかし、TVの呼び方がいつの間にか「メーガン」に変わっているのは何か理由があるんでしょうか。)
 
 どこまで犯罪歴を公にするかという点で州によって違いがあるのですが、僕のいたカリフォルニアでもつい最近、性犯罪者リストの照会Webサービスが開始されています(シリコンバレー地方版さん→かみさん経由)。僕が日本に帰ってしまってからのことですが。
 
 ちょっと使いづらいページなのですが、日本でも同様のサービスが開始された場合を想定するのには、論より証拠でイメージを捉えやすいかもしれないです。ちなみに、二度の注意書きに同意して入場し、地図をクリックしたりしながら、住所を指定する必要があります。 


  Megan's Law Home Page
 
 
 家族がいたので足を棒にして探し回り、環境のいい所に居を構えていたのですが、上のサイトで調べてみると数ブロック内(歩いて5分の圏内)に3人も性犯罪歴を持った人がいました。同じアパートに何人も住んでいたりするように都市部の密集度が当然高くなったり、高級住宅地には少なめという傾向があるものの、後は確率的にご近所さんになってくるようです。家庭内暴力のような事例も含まれているので、富裕層が住んでいる治安のいい辺りだったとしても、心の闇は家庭の奥に潜んでいるかもしれないというのもあります。
 
 公開されている写真を眺めると、大抵がひどい悪人面の中、ご近所だった1名はどう見ても人のいいおっさん面です。そこら辺ですれ違っても何とも思わなかったような感じ。特に、僕の住んでいた辺りは小学校・中学・高校が5~6校密集していた界隈なので、14歳以下への犯罪歴を持っているのを見てしまうと......
 
 
 
 ちなみに、アメリカではご近所情報として犯罪率から住民の平均年収、タイプまで調べられるサービスが幾つかあります。例えば、この辺り。
 
  MSN Neigborhood Details
 
 
 日本の場合、もっと大雑把な犯罪率統計の公開ですら、数年前に開始が話題になったぐらいですからね...それは、身近にある犯罪遭遇リスクが低いことの裏返しでもあるとも言えますが。
 
  犯罪発生マップ (東京都)
 
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.01.09

トラックバック・スパムとクラシック初心者にお勧めと (2)

 え~、(1)の話で「トラックバック野郎」のような企画も今後必要なくなっていくんですかねぇ」というように書いたんですが、12月の半ばからココログがはてなとのタイアップ企画をやっていて、その中で別途トラックバック企画をやっているんですよね(なんでも百選)。
 
 開始されて数日後に覗いてみたところ、これはあんまりトラックバックつかないだろ~なと思ったのが、「ホントはカンタン クラッシック初心者にお勧め1枚百選」。現在も参戦は2枚のみ。しかも両方ともコメント無しだから、本当にお寒い状況です。(そもそも「クラシック初心者」って何だか少々お寒い言葉だと思います。)他のテーマもかなりお寒い状況で、キャンペーンの企画が悪いのか、はたまた露出が少ないのか、神のみぞ知るところであります。
 
 音楽やブログというのはネットやブログとの親和性もいいのか、検索かければありとあらゆる推薦記事、しかもかなりマニアックなジャンルまで出てくるんだけど、クラシックは今まで2箇所見かけたぐらいなので、逆に相性が悪いのかな?と思ってちょろっと調べてみました。個人ページのリンク集ですが、そんな感じで存在しているようです。

 で、そのリンク集元のCLASSICAさんは人気サイトのようですね。僕も昔、この企画の紹介記事をどこかで目にしました。
 

 「無人島の一枚」
 
  
 リムスキー・コルサコフの「シェヘラザード」なんて確かに初心者にお勧めだと思うので、上記のサイトを眺めてもらった方が参考になるような気もしますが、とりあえず個人的な好みと、オルタナティブやテクノ、ジャズ辺りを聴いた耳で勧められるのはどの辺りかって感じで選んで見ましょうか。企画のトラックバック状況が寂しい限りなので、思いつくまま羅列してみっか。
 
 
 

マーラー:交響曲第2番「復活」
シノーポリ(ジュゼッペ) マーラー フィルハーモニア管弦楽団 ヴァイクル(ベルント)

ユニバーサルクラシック
2001-08-22
売り上げランキング 73,283

Amazonで詳しく見る
   by G-Tools

 
 
 上記の「無人島の一枚」でも意外な人気でちとビックリしたんですが、マーラーは19世紀末から20世紀の退廃的な時期をウィーン中心に過ごした作曲家。当時は指揮者としても活躍していて、ケン・ラッセルが伝記映画を撮ってます。革新的な交響曲を9曲書いた辺り(10曲目は途中で逝去)で、「近代のベートーベン」的に位置づけられるんですかね。1曲が長いのでレコード時代は若書きの第1番ぐらいしか人気がなかった不遇の作曲家(各楽章すらLPの片面に収まらなかったので)だったものの、CD時代に入り一気に人気に火が付いたという時代の流れもあり。
 
 CD時代になって人気が高まったというのにはもう一つ理由があって、ストリングスの重低音や甘い旋律が流れていたかと思うと、いきなりブラスが吼え始めるといった、レンジの広さが録音技術のネックだったという点。僕は、そこら辺がロックのダイナミズムに通ずる感覚だと思うので、敢えて初心者にもお勧めしたいのですが、ちと長いのが厳しいかな。最初はBGMとしてどうでしょう?ちなみにマーラーの5番には映画「プラトーン」で有名になったアダージョがあり、7番は百鬼夜行をモチーフにした「夜の歌」、8番は演奏者が千人必要という逸話で有名と、キャッチーなネタに事欠きません。
 
 2番、3番は俗っぽさもあるのが聞きやすくて最初にいいと思いますね。特に、2番は最後で入るコーラスの旋律といい、クールじゃないかと思うんです。初心者にクラシックがやっかいなのは、演奏者と作曲者がイコールではないところ。演奏者が違うと、ポップスで言えばカバーのセンスの如く曲の色合いが変わって来るので、名演を選びとるのが難しいんですよね。星の数ほどあるレコードを全部聴くわけにいかないし。ただし、演奏者にも得意とする作曲家等々相性があるので、有名なマーラー振りは10人ぐらいに絞られる気もします。2番の場合は個人的な好みでシノーポリ盤を推しておきますよ。癖が強いけれど、ロック的な醍醐味といえばバーンスタインもいいのかな。
 
 
 
シベリウス:交響曲第2番
バーンスタイン(レナード) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 シベリウス

ユニバーサルクラシック
2002-09-25
売り上げランキング 21,046

Amazonで詳しく見る
   by G-Tools

 
 
 ダイナミズムという点で言うと、やはりシンフォニーがいいと思うんですが、ショスタコービッチの5番とかこのシベリウスの2番とか、いい意味での親しみやすさがあって初心者から上級者まで楽しめると思うんです。評論家の小林秀雄だったかが、ドボルザークとかシベリウスとかを通俗作家と切り捨てているのを読んで、親父系ジャス評論家とかと変わんねぇなぁと思うわけですが、これは演奏もピカイチなので文句のつけようがないでしょ。
 
 ちなみに指揮者のバーンスタインは作曲家として作品も書いているんですが、ミュージカルの名作「ウェストサイド・ストーリー」を書いたという辺りでも「クラシック初心者」には親しみが湧くのではないでしょうかね。
 
 
 
ブラームス:交響曲全集
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブラームス ベーム(カール) ウィーン楽友協会合唱団 ルートビッヒ(クリスタ)

ユニバーサルクラシック
1991-08-25
売り上げランキング 51,270

Amazonで詳しく見る
   by G-Tools

 
 
 本当は交響曲で有名な作曲家ならば全曲聞いてもらいたいというのはあるんですよね。ベートーベンとかマーラーなんて、いわゆる捨て曲無しの作曲家ですから。The Beatles辺りで洋楽を聞き始めて、歴代のアルバムをさかのぼって行くような聞き方で。と言っても、財布の中身は限られているので、ちと高いけれどいきなり全曲聴ける全集が買えてしまう作曲家をチョイス。
 
 ブラームスは19世紀のドイツ・ロマン派の作曲家。ロマン派というだけに歌心にあふれていて、ストリングスの使い方がグレートです。1番が最も親しみやすいとされるようだけど、完成形の定番4番、賛否が分かれる問題作3番とか、何だかポップスのアルバム紹介のようですな(The Pixiesのアルバムの位置づけとダブるような)。生涯4曲しか書かなかったんだけど、とにかくメロディを口ずさみたくなるような作品ばかりで、捨て曲なしです。
 
 
 
4大ヴァイオリン協奏曲集
ミルシテイン(ナタン) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブラームス ヨッフム(オイゲン) メンデルスゾーン アバド(クラウディオ)

ユニバーサルクラシック
1998-07-15
売り上げランキング 4,956

Amazonで詳しく見る
   by G-Tools

 
 
 好きな楽器や曲のスタイルで聴くという選択もありかなと思って、個人的に好きなバイオリンの音色が楽しめる協奏曲集。超有名曲が4曲入りということで、自分が昔聴いていたのはスターン版だった気もするところ(廃盤の様子)、とりあえずこちらをお勧めしておきます。聴いていないから申し訳ないですが、アバド指揮のヨッフムということでクオリティは一定レベル以上のはず。
 
 チャイコフスキーやメンデルスゾーンのメロディの冴えはソングライターとしても一級だから、ポップス愛好者にも楽しめると思うんです。後は、ドボルザークのチェロ協奏曲とか。クラシック特有の変奏が繰り返されて徐々に時間をかけて曲が進んでいく辺りが退屈と思う人もある部分だけど、ジャズ等のインプロやテクノのような音楽とそんなに遠くないのでは。
 
 
 
R.シュトラウス/アルプス交響曲
ベル(デイビッド) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 R.シュトラウス カラヤン(ヘルベルト・フォン)

ユニバーサルクラシック
1998-06-10
売り上げランキング 30,689

Amazonで詳しく見る
   by G-Tools

 
 
 マーラーを「CD時代になってから脚光を浴びた」と紹介したけれど、R.シュトラウスもCD時代ならではの弦から管までフルに使って色彩の洪水みたいな曲を使うという点でお勧め。初心者といえば、ムソルグスキーの「展覧会の絵」(ロック・リスナーにはELPのカバー、電子音楽好きには富田勲のカバーが有名ですかね)とか、先にも触れた「シェヘラザード」とかあるとは思いますが。
 
 テーマがはっきりあって絵を書くように書かれたこういった管弦楽の組曲は、イメージとの相関という分かりやすさで初めての人にはいい気もします。登山する人が道を歩いていて嵐にあったり、きれいな滝を見つけたりという一連の流れが曲になってます。ちなみに、R.シュトラウスは他にも「英雄の生涯」とかもお勧めできる感じ。この作曲家と言えば、クラシックを聴かない人には、ニーチェの哲学書に題をとった「ツァラトゥストラはかく語りき」が映画「2001年宇宙の旅」の冒頭のファンファーレに使われたおかげで一番有名なのでは。

 指揮者のカラヤンは僕の世代まで一般的にも有名な名前だと思うけれど、たくさんの録音を残している中で、定評があるのはこういった表面的(というと言葉が悪いけれど)な曲の方かな。ベートーベンとかは軽過ぎる気もするんだけど、その軽さが現代的といえば現代的。演奏の隙のなさが凄いんですけどね。とにかくR.シュトラウスは、最もカラヤンの個性とあった演目の気がします。
 
 そういった線では、ここら辺り。
 
 
 

ホルスト:惑星
ロンドン交響楽団 ホルスト プレビン(アンドレ)

東芝EMI
1998-12-09
売り上げランキング 200,996

Amazonで詳しく見る
   by G-Tools

 
 
 カラヤンの十八番中の十八番なので、そちらを挙げとけば問題無いと思うんだけど、敢えて個人的に聴いていた奴を。ただし、新興レーベルから出ていた奴が見つからないので、別の時の録音になってしまうようなのが残念。「火星=戦争の神、マース」といった具合に神話の性格付けを背景に、太陽系の惑星達を描いた組曲でメロディの印象がなかなか。絵画的なので、これも初めてにもいい曲かと。
 
  昨年、平原綾香だかが詞をつけてヒットさせていた「ジュピター」(少々詞がいただけないと思うんですが~歌唱力もか)が、この組曲中の「木星=ジュピター」の有名な主旋律です。今さらながらの選曲だけど、いいものはいいということで、音楽ジャンルを超えてアピールするグッド・メロディということが証明もされたわけだけど、今後も著作権が切れているクラシック曲を借用していくケースが出て来るんですかね。しかし、最近、3つか4つかのテレビCMのバックで使われまくりですなぁ、木星。
 
 
 
ラヴェル:オーケストラ作品集 〔ボレロ/道化師の朝の歌/スペイン狂詩曲/ラ・ヴァルス 他〕ハイティンク/ACO
ラヴェル

ユニバーサルミュージック
1994-07-06
売り上げランキング 

Amazonで詳しく見る
   by G-Tools

 
 
 先にムソルグスキーの「展覧会の絵」の名を挙げたんですが、管弦楽団が演奏する管弦楽バージョンに書き換えたのがラベルというフランスの作曲家。そこからも分かる通り、ストリングス・ブラスの使い手でもあるわけで、上のようなCDはどうでしょうかね。こちらも未聴なんですが、有名な「ボレロ」+自身のピアノ曲を編曲した「クープランの墓」が入っているようなので。
 
 この組曲「クープランの墓」が好きなんだけど、意外とCDが出回ってない気がします。ラベルは古典主義的なところがあるので、Aメロ~Bメロ~サビ~Aメロみたいな3分ポップスのカチッとした構成に慣れた耳にはいい気もしますね。
 
 
 
コダーイ:ハーリ・ヤーノシュ
クリーヴランド管弦楽団 コダーイ セル(ジョージ) プロコフィエフ ボロディン リムスキー=コルサコフ

ソニーミュージックエンタテインメント
2000-08-23
売り上げランキング 38,300

Amazonで詳しく見る
   by G-Tools

 
 
 後は、ロシアや東欧のエキゾチックな節回しを取り入れたここら辺はどうでしょうか?指揮者のセルも少し世代が前になるんですが、アメリカのクリーブランド管との絶妙な演奏でなかなかイイんですよ。「ハーリ・ヤノシュ」はチェコ(だったかな?)の「ほら吹き男爵」のような話を元にした組曲で、洒落っ気ある感じが単純に楽しめるのでお勧め。プロコフィエフもロシアながら、同様の親しみやすい味わいがあるのでコンピレーションもナイスかと。
 
 
 
カントルーブ:オーヴェルニュの歌他
アップショウ(ドーン) ナガノ(ケント) リヨン国立歌劇場管弦楽団 カントルーブ

ワーナーミュージック・ジャパン
2001-07-25
売り上げランキング 100,052

Amazonで詳しく見る
   by G-Tools

 
 
 民謡や民俗音楽を取り込んだ小品集ってのは、最初に親しみやすいところだと思うので、もう一発。こちらはフランスのオーベルニュ地方の曲を集めた作品ですね。昔聴いていたアルバムが無いので、良さそうのを選んでみました。ちと、本当にいいか分からないのが問題ですけど、曲はクラシックを聞きなれない人にもいいと思います。