2004.01.31

中村一義/魔法を信じ続けるかい?

 ロックやポップスの歴史ももはや半世紀を越えているわけで、そろそろ教科書的な歴史観も出来上がってきているかというところ。メインストリームでは歌謡曲的な垢抜けなさが漂うとされて来た邦楽の分野ではどうなんだろうか。
 
 時代性という点で世界にリンクしにくかった日本の音楽が変わって来たのは、やはり90年代からだろうか。当然、その前にも先鋭的で才能がある存在はいたわけだが、現在のように洋楽と同時に聴ける邦楽という存在が一般的になって来たのは、バンドブームと渋谷系という辺りがきっかけの気が。両者ともハイプ的な終焉を迎えたけれど、洋楽における80年代のパンクやインディー・ミュージックにも近い役回りで、日本においてDIY精神と多様な音楽性を育てる土壌になったように思える。
 
 さてさて、そんな大上段な話で始めたのも、日本のポップスの歴史を振り返った場合、後世につながるような90年代のミュージシャンって誰、アルバムって何?ということを、ふと思ったもので。先に挙げた、バンドブームの周辺からと言えば、ブルーハーツ、ブランキー・ジェット・シティ、ユニコーン~奥田民生、渋谷系だとフリッパーズ・ギターみたいな感じ。ま、皆さん、日本の90年代の音楽と言えば欠かせない面子かと。
 
 大体、今挙げた辺りが90年代前半的な面子。その後、海外では90年代と言えば、グランジ~オルタナティブのメジャー浮上、ブリット・ポップという大きなムーブメントがあったわけで、日本からもそこら辺の影響を受けて育った世代のミュージシャンが次々に現れて現在に至るわけですね。昨年はそうしたバンド達が次々に解散・休止して寂しい限りだが、これからも地道に活動を続けて信頼を裏切らないだろうと期待できる存在、それがこの中村一義。

 Kate Bushを始めとして、海外では昔から「衝撃の新人」「早熟の天才」と叫ばれる存在がいたわけだが、日本にはなかなかいなかった気がするぐらい、とにかくこの彼のファーストは嬉しい驚きだった。(以来、七尾旅人ほか、驚異の新人には「第何の中村一義」という呼び声が定番に)。その後、2枚目で少しエッジが鈍ったかなと思いきや、3枚目で新境地へ。4枚目ではバンド編成へと、元々器用なタイプでもないんだが、着実に変化しつつ良い曲を書き続けているのも彼の魅力。
 
 元々、宅録で音楽を始めたおかげで、とにかくライブをやらなかったところ、期待の高まる中、ロックフェスのトリに初登場。3曲ぐらいやって終わりで、とにかくがっかりというか唖然だったなぁ。そんなライブ下手さ加減も、今ではバンド編成のツアーのおかげで良くなって来ているそうだし、これからも質の高い活動を続けてくれることだろう。洋楽で言えば、The BeatlesよりKinks的な立ち位置かもしれないけれど。
 
 ここで挙げた曲は、捨て曲なし、大名盤の「金字塔」より。不遜なタイトル通り、90年代に輝く金字塔。Lovin' Spoonfulの"Do You Believe In Magic?"辺りをもじったタイトルかと思うが、ドリーミーな名曲。デビュー曲「犬と猫」辺りで見せる歌詞のセンスも当時高い評価を浴びたわけだが、ちょっと臭いんじゃないと思う瞬間も。でも、やっぱり光るフレーズの才は抜群でしょう。アルバムの中にはカバー曲「まる・さんかく・しかく」も収録されていて、その選曲センスだけでも○ってもんですよ。
 
 新譜アルバムが出ると、オリコンチャートでもそこそこのポジションに入る彼、かつて日産のTVコマーシャルにも登場して来たりして度肝を抜かれたものだが、いったいマスに対してはどれくらいの人気なのだろうかという疑問が。これだけ良い曲を書いているんだから、「いい曲書くし才能あるのに売れないよねぇ」と言ってフィッスマンズらと対談をしていたスピッツ同様、いきなりメジャー街道に踊り出るかも。そりゃないか。
 
 
 
【過去のコメント】

[Blaja] [2004/01/31 13:39]
おおお、とっても素敵だ。 ブランキーとかマッドカプセルマーケッツとか大好きです!
 
[blue&gold02] [2004/01/31 22:03] [ MyDoblog ]
ブランキーは後期になって聞き始めたので、惜しいことしたな、と思ってますね。フジでのラスト・コンサートもさすがに金曜は仕事で行けなくて......残念。

[マキロン] [2004/01/31 22:29] [ MyDoblog ]
この曲って、聞いたこと無いんですが、
ラヴィン・スプーンフルの「魔法を信じるかい?」(1965)と
関係あるんでしょうか。

[blue&gold02] [2004/02/01 00:14] [ MyDoblog ]
スプーンフルの歌詞が手元に無いので比べられないんですが、あちこちでJohn Sebastian(スプーンフルの中心メンバー)の名前が挙がっていたので、恐らくインスピレーション元として間違いないかと。音楽的にも60's、70's辺りの影響が欠かせないようですし。
「へなちょこ」系の声(小沢健二etc.)に抵抗が無ければ、1stアルバム「金字塔」はお勧めです。ぜひご一聴を。

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2004.01.08

The Auteurs / Unsolved Child Murder

 だんだん音楽のこと書かなくなってきて、看板に偽りありな感じのブログ・タイトル。まぁ、思い入れを下手な文章にしているより、素晴らしい音楽を聴いている方が楽しいもんだしねぇ。音楽ライターの書く大げさな表現みたいなのはイヤだけど、他の媒体の魅力を表現しきる文章力って難しい。グルメ漫画の味覚表現みたいになっちゃうし。だから読み返してみると、今までの記事も何だか思い入れがあんまり無いような内容に思える。大好きな曲ばかりなんだけど。
 
 と、そんなことは言わずに、久しぶりに書いておこう。どうもアメリカにいるせいか、最近聞く音楽がアメリカ寄りになっている気がする。確かに、学生街に行けばヨーロッパ系のCD置いた小さな店(映画「ハイ・フィデリティ」に出てくるような感じ)もあるので手に入らないことはないんだが、MTVとかラジオから流れてくる音楽は当然アメリカンだから。Radioheadぐらいメジャーになると、ラジオ等で耳にするんだけど。ドライブ中とか、カリフォルニアの気候には、やっぱりRed Chili Hot Peppersとかの方が合うってもんです。でも、たまにはイギリスのジメジメした感じも懐かしくなるんだよな~。ロック系の洋楽で最初に入って行ったのは、やっぱりUK方面からだったし。ということで、今回滅茶苦茶イギリスらしいアーティストをどうぞ。
 
 The Auteursは93年にアルバム"New Wave"でデビューしたバンドで、その頃のメディアの評価は80年代のイギリスの金字塔バンド"The Smiths"の後継者といった感じ。確かに当時、中古屋ワゴンセールでたまたま買って聞いた感触もその通りで、地味にいい曲が入ったアルバムだった。バンドはその後2枚アルバムを発表して解散、と思っていたら、その後復活してもう1枚アルバムを発表。バンドはほぼソングライターでシンガーのLuke Hainesの一人舞台。この親父がいかにもなイギリスのアーティスト・タイプで、とにかく毒舌でもって他のバンド群を容赦なく切り捨てまくる。OasisのG兄弟みたいな頭悪い系の方じゃなくて、もっと毒を噴射するひねくれた感じ。
 
 そこら辺の性向と音楽性が絡み合った傑作が、ここで紹介する曲の入った、一時解散前の(一旦)3rdアルバム"After Murder Park"。P.J. HarveyやNirvana、The Pixies等で名を上げた、アメリカのインディー・ロック界の名物プロデューサーS.Albini(今何やってるんですかね)によるプロデュース。Nirvanaの"In Utero"の時はちょっとという所もあって、基本的にアーティストの引き出しを開けるという腕前では疑問な存在なわけだが、この時はL. Hainesの方が主導権を握っていたのか、魅力を最大限に引き出すことに成功。元々のポップなソング・ライティングの才に、荒々しさと暗い陰影が加わって絶品に。
 
 ポップなメロディに強烈にブラックな歌詞を乗せるというのは英国バンドの伝統芸能だが、この曲"Unsolved Child Murder"でも美しい旋律に、タイトルで分かるような歌詞が乗っかっている。日本でも他人事でなくなってきたこういう話に対し、強い怒りと諧謔を込めたこのナンバーはBGMとして聞き流せないような名曲。やるせない気持ちがしみじみと伝わってくるよう。年末に関係したエントリーを書いていて、頭に浮かんだ曲でもある。現在も、L.HanesはBlack Box Recorder等で精力的に活動。Nick CaveやThe The、The Fall辺りが好きな人は気に入るんじゃないのかな。

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2003.12.22

The Posies / Flavor of The Month

 久しぶりに復活、音楽コラム。今回は90年代に輝く名盤The Posiesの"Frosting on the Beater"より。
 
 アメリカにはパワーポップという流れが70年代前後ぐらいからあって、要はギターポップのもうちょっとロック寄りな感じ。分かりやすいバンド名では、Cheap TrickやThe Knack(My Sharona)を思い浮かべれば、大体のジャンルの感触も分かるかと。
 
 The Beatles辺りのポップな感覚でロックをやるようなバンド群。挙げたバンド例でも分る通り、余りメジャーでバンと売れるということは少なく(新鮮さに乏しく目を引かない)、いい曲を書いて地道に活動を続ける場合がほとんど。Nugetsという有名な編集盤があって、名も知れないそうしたバンドたちが残した佳曲群を集めたものとしてかなり有名。(Nugets自体はpsyche等、他のジャンルも含めた無名の60's~70's米バンドのコンピレーション)。
 
 Nirvanaがブレークした辺りから、アメリカではインディ・バンドが続々メジャー・デビューしたので、そうしたパワーポッパーなバンドもいくつか人気を博した。このThe Posiesの他、Velvet Crush、Red Kross、Gigolo Aunts等々。The Posiesはこの一つ前のアルバム"Dear 23"でメジャデビューしたが、その頃の音はかなり穏やかなポップス。次のこの"Frosting on the Beater"でハードドライビングにシフト。捨て曲無しのソングライティングの冴えもあり稀代の名盤に。ところが、その後のアルバムで徐々に失速。悪くないんだが、アメリカでのインディバンドがメジャーに取り込まれその後インパクトを薄めていく流れに乗って、Posiesもこのアルバム期がピークになり活動休止に至ってしまった。
 
 The Posiesの強みは2人のソングライターKen StringfellowとJon Auer。実は現在も活動休止と思われていたPosies、いつも間にかこの2人の中核メンバーで不定期に活動を始め、一度突然来日(4~5年前かな)。ここに挙げた名曲を演奏しくじってジョークを言いながら途中で止めてしまったり、客の入りも20人ぐらいかという寂しい様子だったけど、やっぱり曲の良さは抜群だった。最近はアコースティック・モードに移行しているので、ここに挙げている頃のロックな感じも期待したいところなのだが。
 
 2人はソロでも活動しており、Kenは英Creationの元レーベル・オーナーとしても有名なAlan Mcgeeの新たなレーベルPoptonesからもソロ・アルバムをリリース。そのアルバム"Touched."も結構な佳曲揃い。また、プロデューサーやセッション・ミュージシャンとしてもあちこちに顔を出しており、特にスペインのバンドParkinson D.C.をプロデュースしたアルバムは絶品。スペインに行った時、同バンドの昔のアルバムを探して手に入れたけれど、他のアルバムとは雲泥の差。やっぱり彼が曲作りにも参加したおかげのクオリティらしい。
 
 また、Kenは現段階のR.E.M.のツアーメンバーでもあり、最近では曲作りにも参加している模様。ここで紹介したアルバムの頃にはJon共々、Alex Chilton率いる70'sの伝説のバンドBig Star(アメリカのミュージシャンズ・ミュージシャン)の再生メンバーに加わっていた。とにかく、活動範囲が広く、周りも認める実力ということだろう。
 
 ということで、本業でもココに挙げた名盤を超えるアルバムを産み落として欲しいものだが、それは今後に期待。ここではアルバム中でも一二を争うナンバーを挙げておこう。ちなみに、彼らの歌詞はイメージに任して書いた感じなので難解、意味不明。この曲もこんな感じ。
 
 
 「(今)月の味覚は忙しく、舌の上で溶けていく。飲み込むのは簡単、吐き出すのは大変。」
 
 
 メロディ・アレンジ最高だけど、意味分らん。

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2003.12.03

Sandie Shaw / Always Something There to Remind Me

 最近、音楽紹介のコラム書いてませんでした。マニアックにもなり切れず、かと言って一般的でもないチョイスのせいか、Doblogの中では書いても読む人いなさそうな企画なのだが、初志貫徹。個人的なAll Time Best Tracksとしてアーカイブにしたいので、地道に続けて行くことにする。
 
 本日は60'sのイギリスのシンガーSandie Shawの多分一番有名なナンバーを。この曲が名曲なのは、何と言っても作曲・作詞の名コンビBacharach & Davidのおかげ。Burt Bacharachというと、日本には熱烈な支持層がいるので下手なことを書くとアレだが、良識ある音楽好きならば、21世紀の偉大な作曲家として、"Sound of Music""Oklahoma"等で有名なミュージカル作曲家Hammerstein、Jazz界に幾多のスタンダードを残したCole Porter、超有名スタンダード"Summertime"、"Rhapsody In Blue"の作曲者Gershwinと並び、名前を挙げるだろうところ。
 
 ラウンジーすぎるのでアメリカの若者なぞ聞きやしないのだろうが、その繊細なアレンジとメロディーラインは見事としか言いようがないのです。最近では、映画"Austin Powers"にいきなり登場して、自身の名曲を演奏していた。あの映画が3まで作られるほど受けたのは、アメリカ人の好きなくだらないギャグをベースにしながらも、主演のMike Myersがサブカルチャーのマニアックなところを織り交ぜている点にもある。田舎者のアメリカ人はTV等で主流の単純なモノカルチャーしかしらないから、ヨーロッパの要素や映画の古典を織り交ぜると、奇妙に映って角度のずれた笑いを混ぜられる。一級品のゴージャスさが笑いに転化するということ。映画のストーリーとしても、パターンとして途中で主人公が失恋等々でホロッとする、という展開があって、そこでかかるのがBacharac。ということで、音楽的な要素でもかなり絶妙なところを突いているわけ。
 
 Bacharacの名曲は繰り返し繰り返しカバーされてきており、有名なところでは"I Say A Little Player"、映画「明日に向かって撃て」で使われた"Raindrops Keep Fallin' On My Head"等々。そうした曲を集めたベスト盤がレーベルRhinoより出ているので、そいつがお勧め("Austin Powers"内で歌われた曲も収録。)
 
 アメリカではネットオークションといえば、「ヤフオク」の出る幕なく、e-bay。最近、TVCMで「店員がいきなりミュージカル風にe-bayの素晴らしさを歌いだす」というのをやっているのだが、"My Way"の次の第2弾がBacharacの曲"Do You Know The Way To San Jose"。こいつを替え歌にして、「あなたはe-bayへの道を知ってますか~?」と繰り返す。元歌がシリコンバレー、e-bayの本拠地で有名なサンノゼを歌って、「LAは大都市だけど、比べてみてもSan Joseはいいところ♪」みたいな歌だから、そこもかけていると睨んでいるのだが。
 
 Sandie Shawについては、個人的にThe Smithsという80年代のUKバンドが好きだったのだが、彼らがオールディズ・マニアで、自分達の曲を歌わせるため彼女を引っ張り出していたのが初の出会い。解説によると「生足で一世を風靡した」とのこと。へぇぇ...
 
 Bacharacの作曲した中でも表題曲は最も好きな曲。失恋した女性が、ファナティックに「あなたのことを忘れられない」と歌う。5~6年前にもEspirituという女性歌手がスペイン語交じりでカバーしていた筈。Sandie Shawのバージョンもオリジナルではなく、その前にLou Johnsonというソウル・シンガーが歌ったのがオリジナルのようです。
 
 ちなみに、曲のさび、
 
 「私はあなたを愛するために生まれてきたの。もう私はもう永久にあなたから自由になんてなれないわ。」 

という一節は、男子ならば一生に一度でいいから女性の口より聞いてみたい文句です。
 

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2003.11.29

Polaris / 光と影

 ほとんどのCDコレクションを日本に置いて渡米してしまったので、突如として聴きたい曲が出てくると「あ~~っ!今聴きたい、すぐ聴きたい」と足をバタバタさせてしまう。ずーっと机にかじりついているような生活だから、音楽は数少ない楽しみであるわけだし。欧米の曲ならば買おうと思えば、大抵手に入る。渋谷宇田川町界隈、新宿周辺を知っている日本人にしてみれば、まぁたかが知れてるが、アメリカにしては充実した音楽生活が送れるベイエリアはいいところ。カナダとかスペインとか行ってみて驚いたけれど、税金高すぎて日本でCD買った方が安いんだもんね。と言っても、使い捨て作品以外で日本のアルバムを現地にて手に入れるのはまぁ難しいと言えば難しい。大学周辺では、意外と輸入盤とか中古盤のところに日本盤が混じっていてビックリするのだが、日本のアーティストはねぇ。Amazonの向こうをはった「CDならば全世界送料無料」というサービスもあって(コチラ)、意外とリーズナブルに手に入るのではあるが、自分が持っているCDをまた買うのもねぇ。
 
 というわけで、今無性に聴きたくなった名曲「光と影」。とにかく長い曲なのだが、歌詞と雰囲気が微妙に絶妙なバランスを保っていて、飽きさせない佳曲だと思います、ハイ。
 
 ギターに元Fishmansのメンバーがおり、プロデューサー、曲の感じを含めて、今は亡きFishmansというバンドと比べられてもやむを得ない音楽性なわけだが、もう少しほんわか温かい感じかな。Fishmansには何か少し聴き手を突き放す要素があったようにも思えるので。
 
 Fishmansはかなり長い活動歴を誇り、末期は批評家サイドで絶大な評価を得たバンド。ジャンルで言えば、ダブ寄りポップス。セカンド・アルバムの「King Master George」で深夜枠のドラマの主題歌に使われたりして、僕が聴き始めたのはその辺り~その後の名作アルバム「Neo Yankees' Holiday」、シングル「Go! Go! Around The World!」の頃。渋谷系の狂騒まだ覚めやらぬ頃で、結構会社も渋谷辺りで押しまくてたっけ。その後、音の要だったギター、キーボードがボロボロ脱退していって、とうとう3人体制へ。レーベルも移籍、どうなることかと思っていたら、移籍後の「空中キャンプ」で絶妙な音空間と個性を見せつけて、一気にパワーアップ。ところが、その後、最高の評価を得ながら、ボーカル兼メイン・ソングライターの佐藤氏逝去によって、バンドは終了。かなり衝撃的な結末に。残る2人のメンバーは、それぞれセッション・ミュージシャン→スカ・パラ加入&このPolaris結成へ。
 
 歌詞と作曲者として稀有な存在であった佐藤氏亡き後、今さらかつてのFishmansと比べるのも筋違いだと思うけど、このナンバーは歌詞から、亡くなってしまった者への残ったメンバーの想いすら感じさせる(実際はもっと一般的な歌なんだろうけど)名曲。あ~、今聴きたい。

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2003.11.27

Suede / Living Dead

 今回は、とうとう活動停止を発表したUKのバンド、Suedeの1曲を。若い世代には最早Suedeと言えば、3枚目のアルバム"Coming Up"辺り、SonyのCMでも使われた名曲"Trash"の頃のイメージになってしまうのだろうか。
 
 Suedeは当初Brett Andersonというボーカル・作詞担当とギター・作曲担当のBurnard Butlerの2人が中心で始まったバンド。薬中、同性愛等をテーマにした歌で、ハイプに近い感じでメディアにもてはやされてデビューした。歌詞に注目が集まりがちだが、同時に官能的なButlerのギターの個性も賞賛を浴び、「The Smiths(その内、取り上げる予定)の再来」とも。しかし、2枚目のアルバムを出す辺りからB.Butlerがそんなバンドの戦略等に嫌気がさし、喧嘩別れで脱退。何たって、マスコミに「あなたは同性愛の経験がないくせに、あんな歌詞を書いているのでは?」と聞かれて答えたB.Anderson。
 
 
 「僕は精神的なバイ(・セクシャル)。」
 
 
 (「精神的」って何?)
 
 そういった、歌詞を含め、スキャンダルなテーマをあさってイメージを作り上げるような活動が嫌だったのだろう。その後、B.Butlerはソロ等、独自の活動で頑張っているが、対する残り陣営のSuedeについては皆、メインのソングライターが抜けたことで「もうダメじゃん」と思っていた。ところが、若いメンバーを加えて復活。それが先に挙げた3枚目アルバム"Coming Up"。
 
 確かに"Coming Up"は曲が粒揃いで名作なのだが、個人的には「う~ん」というところがあった。その前まではB.Butlerの才能で、ギターが聞いた曲、ピアノ・ソロの叙情的な曲、と、センセーショナルな歌詞を抜いても、幅を広げられるこれからに期待できたのだが、新メンバーの曲は何か「いっぱいいっぱい」という感じが無きにしもあらずだったから。引き出しが少なそう、というか。日本の雑誌は煽りに煽ってたけれど、その後のOasisみたいな立ち位置といった感じ。その頃のライブを観に行ったけれど、やっぱり1本調子という感があった。その後、徐々に売れ具合がジリ貧化して、残念な活動停止という結果らしい。
 
 今回紹介するのは、オリジナル・メンバー在籍中、分裂間近という頃のナンバー。内容は、薬中の恋人もしくは友人に向かっての歌で、「もうお前はボロボロじゃないか。付き合っていくのは無理だから、さようなら、出て行くよ」といった感じ。日本のアンチ・ドラッグ政府広報BGMにいかがでしょう。当時セカンド・アルバムの先行シングルとして出てヒットした"Stay Together"のB面曲。彼らのイメージらしからぬアコースティックな静かな曲で、個人的にものすごく好き。短く派手ではないが、きれいな名曲です。ちなみに彼らのB面曲のレベルの高さは有名で、この曲も2枚組みB面曲集アルバムに収録されています。
 
 ジャケットを見ると分かるのだけれども、アメリカではバンド名が"London Suede"。"Suede"という同名バンドがアメリカにいたから、訴訟絡みでそうなった。でも、著名度が違うじゃん!Nirvanaにはそこそこ有名な70's周辺にソフトロックの同名バンドにいたが、そっちはNirvana(UK)。筋が通っとらん。自国が基準ですか。こういうところがアメリカの嫌なところ。

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2003.11.26

2 Many DJ's / Peter Gun vs. Where's Your Head At

 今まで取り上げてきた曲を見返してみると、アメリカのバンドばかり。ちょっとジャンルにも幅を持たせないといかんですな。ということで、今回は米国発以外で去年の話題作を。少し古いかな。
 
 2 Many DJ'sはベルギーのバンドSoulwaxの中心メンバー2人によるDJユニット。Soulwaxも結構いい曲を書くバンドで、最近作は結構好きだったわけだが、いろんな音楽性を取り入れているといっても、ちょっとイナタイんですよ。だから、彼らがDJ活動もしていて結構人気という話をインタビュー等でもしていたけれど、あんまり気にしてなかった。バンド系ミュージシャンのDJという奴は大抵ミックス・テープに近い感じになってしまうから。曲への思い入れが強すぎるんだろう。ところが、彼らは昨年出回ったこのDJミックスCDで欧米あたりの話題をかっさらった。こっちの本屋で幾つか雑誌を立ち読みしてても、ダンス系の雑誌では、Timo Marrs、X-Press、The Streets辺りと一緒にベスト10の常連に。
 
 スタイルとしては、とにかくHip Hop、歌謡曲的ヒット曲、House、オルタナ系ロックをごちゃ混ぜにつなぐ感じ。皿洗いしている時にお気に入りのサンフランシスコ、オルタナ系ラジオ局で、この前The Avalanchesのミックスかけてたけど、もう最近では一気にこういったスタイルが本流化。やっぱり昨年プロデュースしたThe Raptureがブレークして注目を浴びたDFAのメンバーも、「昔はジャンル飛び越えたDJでも人気だったのに、2 Many DJ'sみたいなセンス+スキルを持った奴が出てきて、出る幕なくなったよ。」とぼやいておりました。
 
 紹介の曲はアルバムの冒頭をかざるナンバー。ELPの"Peter Gun(Live Ver.)"にBasement Jaxxをかぶせるという無茶苦茶なミックスだけど、度肝を抜かれることは確か。この他にも彼らは、NirvanaにDestiny Childをかぶせたり、Herb AlpertにPublic Enemiyをかぶせる派手なミックスをやってくれていて、こんなのアリ?という感じなのは確か。(先に書いた、The Avalanchesのラジオ局ミックスでもNirvanaは人気ネタでしたね。)ちなみに、
 
ELP: 70年代のプログレ(楽器演奏・即興が長く、重厚長大系でアートぶったロック)・バンド、クラシックのムソルグスキー「展覧会の絵」カバーで有名。ここでの曲自体はイージーリスニング界の重鎮H.Mancini(「小象の行進」とかも有名)の曲。
 
Basement Jaxx: Fatboy Slim辺りにもつながる、アッパー系ダンス・ユニット、ここでの曲はアメリカでもプリングルスのCMになってるぐらいのヒット曲。
 
Nirvana: うるさいインディ系ギター・バンド
 
Destiny Child: 言わずと知れた、ブラック系ビルボード常連3人組
 
Herb Alpert: トランペッター。イージーリスニング系バンドを率いて60年代辺りから活躍。私らの上の世代には、AMラジオ番組のテーマ曲として使われておなじみに。
 
Public Enemy: ヒップホップ第2世代として白人リスナーに間口を広げた功労者。音は確かにヘビー・ロックに通ずるものが。

 
 まぁ、要はジャンル横断です。日本人には、こういう聴き方って結構抵抗ないけれど、アメリカとかじゃラジオ局からCD屋から対象層がきっちり分かれているから、アプローチが新鮮だったのでしょう。ラジオを聴いていると、Chicagoとか80'sしかやっていない局もあって、「いつの時代だよ?」って笑えます。 
 
 ちなみに、このミックス・シリーズ、7枚までアルバムがあるようだけど、基本的にプロモ・オンリーで非売品。2枚目だけ、何とか苦労して権利関係を整理して市販品にしたので"Vol.2"。(だから、オリジナルと曲目・ジャケットが違うようだけど。)なぜか、アメリカのAmazonでは他のアルバムも売ってます。いいのかな?こちらの大学近くのマニアックなCD屋で手に入れたけど、やっぱ「プロモ・オンリー」って書いてあるんだけどなぁ。

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2003.11.24

The Flaming Lips / Race for the Prize

 友人に紹介した時は、「燃える唇、何か怖い名前のバンドだね」と言って、実物をライブに観に行ったら、ボーカルの音痴ぶりに拍子抜けしてた。まぁ、確かに歌がうまいとはいいがたいが、バンドは唯一無比。
 
 昨年、この後に次の最新アルバム"Yoshimi Battles The Pink Robot"を出して、これがまた名作。紹介しているこの曲が入っているアルバム"The Soft Bulletin"の一つ前のアルバム"Clouds Taste Metalic"でワーナーからメジャーデビューしたけれど、その前のインディ時代が非常に長く、知る人ぞ知る結構な有名バンドだった。一つ前のアルバム"Clouds Taste Metalic"を結構愛聴していたけれど、CD屋で最初この曲を耳にした時は同じバンドだと思わなかった。その通り、このアルバムを境に、音の感じをガラッと変えている。
 
 昔はギターガシャガシャの如何にもインディーっぽいサイケな感じだったが(その感じもいいのでライブでは今の感じと混ぜてやってほしいものだが)、ギター・メンバーが抜けたことで、ストリングスを入れたりより聴きやすいポップに変身。根っこは同じで、奇妙な感じは残っているんだけど。
 
 個人的にこの曲を「理系諸君のテーマ・ソング」と命名しているが、歌詞の内容が、
 
 
 「(ノーベル)賞目指して競争する研究者2人~♪」
 
 「~顕微鏡を覗いて、何か見つからないかと頑張る頑張る~♪」
 
 「~でも、それは大変、彼らだってただの人間さ、妻子がいるんだよ~♪」
 
 
 
という感じで、ま、本気だか何だか、よく分からん歌詞。メイン・ボーカルで中心メンバーのWayne Coyneはこのアルバムが出た頃、
 
 
 「今度は全編"愛”についてのアルバムなんだ」
 
 
と語ってました。はぁ、愛ですか、どこが?何せ次のアルバムは全編「近未来都市で悪のピンク・ロボットと戦うヨシミさん」についてだもんな。変わってます。
 
 それはさておき、アルバムも傑作、曲も彼らの代表曲と言えるので、ぜひ一聴を。

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2003.11.22

Elliott Smith / Son of Sam

 暗い話はこれで終わりにしたいので、締めの1曲。つい先日、胸に短剣を突き立てて自殺してしまったElliott Smith (合掌...)最後の名作アルバム"Figure 8"より冒頭のナンバーを。
 
 もともとアコースティックで内省的なイメージが強かったSmithは、この一つ前のアルバム"XO"の曲が映画に使われたことでブレーク。期待が高まった中リリースされたアルバム"Figure 8"では、The Beatlesで有名なアビーロード・スタジオで収録を行う等して、ブラス、弦、ギター・ノイズを取り入れた新境地を開拓。才能を惜しみなく見せつけたところで...
 
 昨年デビューしたアコースティック系の新人シンガーソングライターRhett Millerは彼を指して、
 
 「大好きだけど、良くない意味での本物のアーティスト。彼には、悪霊に悩まされながらこの世を生きることが苦痛でしかない。彼ほど苦悩に満ち満ちた、でもあんなに人の心を打つ曲は絶対書けないと思う。」 

と語っていた。その言葉通りの結末が待っていたわけだけど、あんなにいい作品がもう生まれないのかと思うと、Nirvana同様悲しくなってしまう。
 
 このナンバーは彼独特の美しい歌詞に彩られているものの、扱っている題材は「サムの息子」と呼ばれたサイコパスの視点で書かれたもので、結構問題作。先のMillerの「悪霊つき」という表現がしっくりくるようなナンバーながら、暴力性を感じさせる激しいギターのカッティングに彩られたメロディは美しいの一言。
 
  「サムの息子」について
 
 この事件については、Spike Leeも"Summer of Sam"という映画で題材に取り上げている。今年の夏には東海岸側で、この事件を思わせる異常スナイパーによる連続殺人があって、いろいろな意味で昨今の生活とリンクしてくる話なのでは。
 
 Smithはアル中等で苦しんでいたようで、とうとう自ら命を絶ってしまったわけだが、異常者と正常者の境目は限りなくグレーで、人間は狭い境界線上を歩きながら暮らしているようなもの。この曲は、正にそうした混沌とした世界を映し出す名曲だと思う。

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2003.11.20

Hole / Malibu

最初の1曲はカリフォルニアにちなんだ曲を。MalibuはLA近くのサーフィン等で有名な海岸。行ったことはまだないですがね。HoleはKurt Cobainの奥様として有名なCourtney Loveが率いたバンド。この曲は彼らのラスト・アルバムから。クレジットを見ると元Smashing PumkinsのBilly Coganが曲作りから参加している。
 
 Kurt Cobainといえば90年代にブレイクしたNirvanaのボーカル兼ソングライターで、薬物中毒等のきらいもあって自殺してしまったことで伝説となり、影響を受けていないような若手バンドは今いないぐらい有名に。年がばれるけど、やっぱり自殺報道の時はショックを受けたなぁ(と、遠い目)。アメリカでも今の学部生であるような世代にとって(といっても周りにいるのは留学生が大半であるが)、Nirvanaは最早マストのよう。Courtney Loveも旦那同様、薬物中毒のようで、とうとう最近子供を取り上げられてしまったというのがニュースになっていたけれど、こちらのコメディ番組等でもあばずれさんの代名詞としてよく登場。
 
 さて、話は戻ってタイトル曲。当時のインタビューとか読んでなく、ワゴンセールでかなり後買いしたので100%ではないが、正に死んでしまった旦那を想って唄った悲しい歌と読んで間違いないはず。悲しくなるけれど、きれいな曲。最近もEliott Smithが自殺してがっかりだが、LAは強い日差しの元、そういったアメリカの闇を感じさせるような雰囲気がただよう街。

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